インタビュー

写真左から安部仁晴、江口香瑠、首藤渉。



ー まずは三人の出逢いを教えて。

渉:僕がやってる別府の店(自身の洋服ブランドも扱うセレクトショップ)に2017年の3月頃、江口君(江口香瑠)がどこからか情報を聞きつけてやってきたんですよ。

香瑠:市役所に行く用事があって、いつもは決まった道を通るんですけど、ちょっと別府を探索したいなと思って見つけたのがわたるさん(首藤渉)のお店でした。もともと服に興味があったし、外から見ててお店の雰囲気がやばい感じだったんで「ここやべーな」って思いながらお店の外をうろうろして一旦市役所に行ったんです。その後また戻ってきて、もう一回入ろうか迷ってからやっとお店に入ったんですよね。

ー それが初めての出会い?

香瑠:そうですね。元々服を作りたいと思ってたし、色々お話も聞きたかったんで、思い切って声をかけたんです。

ー それまでは全く服とか作ったことはなかったの?

香瑠:全くなかったですね。ただ着るのが好きだったって感じで。

ー なるほど。まず首藤君と江口君が出逢ったんだね。

渉:そうですね。それで別府を盛り上げるためにファッションショーをやろうってことになって、江口君がAPU(立命館アジア太平洋大学)の学生なんで、モデルを集められるってことでファッションショーをやることになったんです。それで、2017年の7月15日に永久別府劇場で初めてのファッションショー(beppu fashion day 2017)をやったんです。

みんなで温泉に入りに行くこともよくある。



ー 僕が撮影したbeppu fashion dayの初回ってことだね。

渉:はい。その後にジン君(安部仁晴)と出逢う感じです。

仁晴:僕が中学を卒業してすぐの時だったので、確か2018年の3月頃です。首藤さんのお店の近くにolovoっていうカレーが食べられる雑貨屋さんがあって、僕のお母さんがそこで場所を借りて月一くらいで筆跡診断をやってたんですよ。
僕は服を作りたいから高校には行かないって言って、中学を卒業してすぐフリーターみたいな感じだったんですけど、お母さんがolovoの方に僕の話をしたら首藤さんのお店を紹介してくれて、母と一緒にお店に来て、首藤さんに服作りを教えてくださいってお願いしたのが初めての出会いですね。

ー 面白い出逢いだね。二人ともこのお店に引き寄せられたんだね。

一同:そうですね。

香瑠:万有引力(首藤君の店で制作しているブランド)のくるみさんもそうですし、ジン君以外にも、服作りたいってお店に来た人はいましたね。ここってきっとそういう場所なんです。

お店の2階でそれぞれのブランドが洋服を作っている。



ー お店で服を作ってそれを売るっていうスタイルのお店ってなかなかないし、この雰囲気はアンテナ立ってる人は見逃さないよね(笑)

香瑠:そうですね。なかなかないですよね。セレクトショップや古着屋って沢山ありますけど、普通は服を売っているだけですからね。

ー 3人は別府でファッションに携わってるけど、別府のファッションってどんなイメージ?

渉:別府でストリートカルチャーができればいいなってずっと思っていて。かと言って、これって別府っぽいよねってファッションを定義づけするのは難しいと思っていて。
まずは、服が好きな人や活動的な人が集まってきてコミュニティーが出来たら、そのうち出てくるんじゃないかなって思って今もやってます。
それで今回2回目のファッションショー(beppu fashion day 2018)をやったんですけど、当て付けでもいいから『別府らしいスタイル』を何か一つ決めようってなったんですが、結局これっていうのが出てこなくて(笑)
じゃあ、その『イメージできない』とか『つかみどころのない』感じをあえてイメージできないままごちゃ混ぜにしたらどうかと。

beppu fashion day 2018のモデル達。



ー それでテーマを四次元にしたんだ?

渉:そうですね。今回参加した四人のブランドもそれぞれみんなテイストも違うし、それはそれで縛らなくてもいいし、そんな風にやってるのがまさに別府っぽくていいんじゃないかなって。

ー なるほど。これを着てるから別府っぽいじゃなくて、多種多様なことをやってるその活動やスタイルが別府らしさってことなのかもしれないね。

香瑠:ただ、カルチャーとして根付かせるためには「これ」っていうのも無きゃいけないと思っていて、クラウドファンディングを立ち上げてみんなが着やすいTシャツをデザインして作ったりもしました。
自分たちがそれぞれ自由に作ったものと、周りの人たちに分かりやすく受け入れてもらえるタイプのものと2パターン作って反応を見たりしてました。

ー 個人的には伝統と流行りを混ぜて不易流行みたいなことを洋服でもやって欲しい。別府ならではの。例えば着物とか。

渉:江口君が前にやってたブランドはそんな感じでしたね。今では全くテイストが変わってますけど。

香瑠:僕が前にやってたブランドは着物を使ったものを作ってましたね。2017年のファッションショーのベースは着物でした。

ー どうしてテイストを変えることにしたの?

香瑠:前のブランドをやってた時は学校で社会問題について学んでいて、そこから日本の文化とかに興味を持って、それらを服と結びつけて、若者っぽくオシャレに発信したいなって考えたんです。
それで、イギリスに留学した時にもっと深掘りして学ぼうと思ったんですけど、逆に視野が広がりすぎちゃって。まずは自分が本当にやりたいことにフォーカスしたデザインをやりたいって考えた時に今のデザインになった感じです。
でも、将来的にはコレクションごとにテーマを変えたりして、色んなテイストを出していきたいですね。

七ツ石温泉はお店から車で5分ほど。



ー いいね。仁晴君はまだ16歳だけど、これからも別府で洋服を作っていく感じ?

仁晴:そうですね。まずはここで作っていきます。

ー 進学せずに現場でファッションを学ぶというのは、普通の16歳ではなかなか経験できないことだよね。この別府という濃い街でしか経験出来ないことを今後の服作りにも活かせたらいいよね。

仁晴:僕今、髪の毛ピンク色なんですけど、大分にいた頃はサザエさんに出てくるタラちゃんみたいなマッシュルームカットにしてて、街を歩いてると指差されて笑われることもあったんです。
でも、別府だとピンク色の髪でも何も言われなくて、視線を感じることもなくて、変わってる人でも受け入れてもらえるような雰囲気というか温かさがすごく良いなって。

ビート版が浮かぶ温泉は別府でもここだけ。



ー 別府ってそういう街だよね。「受け入れる」っていう文化がある街だよね。

仁晴:別府は個人を尊重してくれる雰囲気があると思います。

ー 僕は多種多様という意味で別府はリトルニューヨークだと思っていて、APUが出来て多様性が増して、さらに面白くなったよね。学生のイベントで多国籍のモデルを集めて、インプロビゼーションなノイズ音楽を生演奏して、ランウェイを歩くだけじゃないファッションショーをやるって普通はなかなか出来ないと思う。

渉:そうですね。別府だから作れた雰囲気だと思ってます。

七ツ石温泉の喫煙所。仁晴君(未成年)だけ喫煙しない。


七ツ石温泉裏の空き地にて。



ー ありがとう。最後にこれから別府に来る人へメッセージを。

渉:別府はちょっと掘ったら温泉が出てくるじゃないですか。それと同じで、ちょっと行ってみようかなって感覚で路地裏をフラッと歩くだけで色んなお店があるし、面白い人と出会えますよね。掘って(探して)もらわないと出会えない側の僕からすると、どんどん掘りに来て欲しいですね(笑)
ちなみに僕の一押しは書肆ゲンシシャです。

香瑠:別府に来てすぐの時は、全然温泉に入るタイプじゃなかったんですよ。行くとしても大きな施設の温泉ばかりだったんですけど、最近、わたるさんのお店に住み始めたんですけど、近所の小さな公衆浴場入るようになってから温泉にハマってしまいまして(笑)
ガイドマップを見て行くみたいな王道な観光も楽しいですけど、地元の人と同じ目線でブラブラ街を歩いてみて欲しいですね。

仁晴:僕は大分出身なんで、ちょこちょこ別府に温泉入りに来たりはしてたんですけど、毎日通うようになってから首藤さんや香瑠さんに色んな場所に連れて行ってもらって、ディープな場所や人に出会って刺激を受けてます。
なんというか、温泉みたいに「湧いてる人」が別府には沢山いるんですよね。だから、二人が言ったみたいに自分から進んで刺激を受けに来て欲しいですね。別府は本当に掘ると面白い街だと思います。



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モデルプロフィール

名前(左から) Name 年齢 ブランド
首藤渉 Wataru Shuto 31歳 TONTONTONTUTU
江口香瑠 Kaoru Eguchi 22歳 KAORU EGUCHI
安部仁晴 Jinsei Abe 16歳 medjed

クレジット



写真撮影・インタビュー:東京神父
撮影協力:七ツ石温泉、別府市、別府市温泉課、TONTONTONTUTU、KAORU EGUCHI、medjed、Beppu Fashion Day(撮影:東京神父)。

撮影のメイキングはこちらから。
別府もアイデアも掘るから面白い

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