インタビュー

温泉に浸かり、満面の笑みを浮かべる花田さん。



ー 花田さんが別府に住むことになったきっかけを教えてください。

花田:僕は熊本県出身なんですが、2005年に付き合っていた彼女(今の奥さん)と大分に旅行に行きたいねという話になりまして、初めて泊まったのが明礬にある「ゑびすや」という温泉旅館でした。
最初はいい温泉だなーくらいだったんですが、その4年後にビーコンプラザで「関ジャニ∞」さんのコンサートがありまして、うちの嫁さんが大好きで、行きたい!ってなりまして(笑)
この時に泊まったのが堀田にある「Hotel芙蓉倶楽部」で、そこで入った温泉が前回入った時の温泉と泉質が全然違うというのが素人の自分にも分かって。「え!?なにこれ?別府すげー」となりまして。
で、コンサートを見て北浜にご飯を食べに出たんですが、タクシーの運転手さんに「どこか美味しい所ありますか?」と聞いたら「酒饌もり澤」という居酒屋をご紹介頂いて。今はもう閉店してしまったんですが、そこでお魚を食べた時に「なにこれ!めっちゃ美味しい!」となりまして。
熊本出身なので魚でNo.1は天草だと思っていたんですが、見事に思い込みが外れました(笑)
食事は美味しいし、安いし、温泉最高だし、そこからちょこちょこ通うようになりました。

ー きっかけまでまだまだかかりそうですね(笑)

花田:ここからです!(笑)
それで別府が大好きになりまして、色々調べている時に温泉のブログを書いてる方に辿り着いて、別府に来た時に実際に会いに行ったんです。
その方に別府の魅力を色々と教えてもらって、「別府八湯温泉道」の話も聞いて、騙されたと思って初めてみたらとオススメしてもらいました。それでスタンプを押し始めたらスイッチが入って、見事にハマってしまいまして。「なにこれ!楽しい!」と(笑)

もちろん名人にもなっている花田さん。



ー それは分かります。僕もこんな温泉があったのか!という驚きもあり、どんどん楽しくなってきましたから(笑)

花田:それぞれに個性がある温泉が沢山ありますからね。
それで、その方が別府の色んな方を紹介して下さって。ちょうどその頃、民主党に政権交代した時期でETCが1000円になったんです。僕の住んでいた御船から別府まで2時間が1000円になって、それがきっかけでどんどん別府に来るようになりました。
町歩きとかにも参加するようになって、別府の人に触れ合うようになって、さらに好き度が増してしまって。

ー やはり別府は人に触れてその良さが分かる街ですよね。

花田:そうなんですよ。そこから結婚もして子供も生まれて、いつかは別府に住みたいと思い始めて、僕は実家がガス屋で嫁さんも公務員で安定はしていたんですが、挑戦していないことに対して自分の中でずっとモヤモヤがあったんです。
それで一番大きなきっかけは2016年の熊本地震でした。
僕が住んでいた御船町は震度7を観測した益城町の隣町だったのでかなり揺れたし、近所の被害も相当なものでした。町が変わってしまったことにかなりショックを受けて、その何ヶ月の記憶がないくらいです。
その時に自分の人生はこれでいいんだろうか?と本気で考えるようになりました。

これから別府で夢を追いかけいく。



ー 初めて死に直面して、人生観が変わったということですかね?

花田:安心安全の生活も大事だけど、それすら当たり前じゃないんだと。
子供達にチャレンジしている姿を見せたかったし、何より今のままでは死ぬ時に「俺の人生これで良かったんだ」と思えないだろうなと。
それで大好きな別府に何か貢献が出来ないだろうかと考えて、嫁さんに相談したら「とんでもないこと言わないでよ」と反対されて。その時は3人目が生まれるという時期でしたから。
でも、ワガママかもしれないけど、自分の命は本当にしたいことのために使いたいと説得しました。別府に来ることだけを決めて、仕事を辞めました。

この笑顔も、痛みを知っているからこそ。



ー そこから別府でゲストハウスをやることになるわけですよね?

花田:まずは別府で土地や建物を探し始めました。やはり別府といえば観光ですから。観光を通して、別府の魅力を伝えていきたいなと。

ー 熊本の方は別府にはよく観光に来るんですか?

花田:熊本の人は別府といえば、大きなホテルに泊まって、ホテルでご飯も食べて、地獄めぐりに行って、ぐらいしか知らない人が多いと思います。
別府にまた来たいかと聞いても「もういいかな」ってなるんですよ。次は湯布院かな、鹿児島かなって。
大型のホテルも地獄めぐりももちろん楽しいですが、別府の魅力はそこだけじゃないと僕は思っているし、駅前のディープなスポットや鉄輪温泉の湯の川に友達を連れて行くと「すげー、別府がこんなに凄い所とは思わんかった」ってみんな言うんですよ。
昭和12年に京都大学の関口鉄太郎教授が言った「単に温泉の都としてのみ見るのは大なる誤りである。これではせっかく別府へ来ながら僅かに別府の一部を覗いたというに過ぎない」という言葉通りで、みんな知らないだけなんです。
そこで印象が変わると帰った時に口コミで「別府凄いよ」ってなるんです。

ー 別府に限らずですが、地元の方と一緒に観光するとより楽しめますよね。

花田:だから、僕は別府の魅力を「しっかり顔が見えて」「濃い会話が出来て」「街を案内できる」ゲストハウスというスタイルで伝えていきたいなと。
別府は空襲を逃れているので、出来れば古くて歴史のある物件が良かったのですが、なかなか見つからなかったですね(笑)

ー 古民家を探すのも大変なんですね。

花田:そんな中、堀田の山の方にある物件を見に行った時に「何しよんのか?」と地元の方に話しかけられて。
物件を見に来ましたと伝えると「もっといいとこがあるわ」と言われて(笑)
そのおじさんが物件と大家さんを紹介してくれて。結局そこはダメだったんですが「そんなんで諦めたらダメや!」と、また不動産屋を紹介して下さって。
その不動産屋さんが今の物件を見つけてくれたんです。「花田君にぴったりの物件が見つかったから、明日別府に来れん?」と言われて(笑)
築約80年、建築基準法以前の建物で色んな問題がありましたが、ようやく2018年の7月に「In Bloom beppu」という名前でゲストハウスとしてオープンすることが出来ました。

別府の古き良き公衆浴場。



ー 実際にオープンしてみてどうでしたか?

花田:最初は全くお客さんが入らなかったですね。「うわー、やらかした!」と正直思いました。9月前半はほぼお客さん0でしたから。嫁さんにも「働きに出たら?」と言われました。
とにかくまずは出来ることをと思って、街の人と繋がることを全力でやりました。そこで出逢った方に僕の想いを伝えていったら、だんだん応援して下さる方や手伝って下さる方が増えてきて。徐々に口コミで利用して下さる方が増えていった感じです。

ー 花田さんも元はそちらの立場だと思いますが、別府に来る旅行客の方と接してみてどんな印象ですか?

花田:うちは部屋数も少ないんですが(1日2組限定)、やはりその数じゃないとガイドをして、一緒に別府の街を散策してということが出来なくなって来るんですね。
地元の人達と触れ合ってもらうことが何よりも大事で、それをやらなければ僕が別府でゲストハウスをやる意味がなくなってしまいますし、実際に観光に来た方達を繋げていくと本当に喜んでくれますね。
別府に普通に暮らしている人と仲良くなる環境を作ってあげられたらいいし、特に別府に住んでいる人達の人間味や温かさは、本人達が思う以上に凄いと僕は思っています。

温泉も生活の一部になって来た花田さん。



ー 観光は光を観ると書きますよね。その光はつまり生活の光ということかもしれないですよね。

花田:本当にその通りだと思います。
観光都市として色んなものを作ることも大事だとは思うんですが、もうすでにそこにあるというか。
別府の人達の生活こそが観光資源なんじゃないかと思いますね。格好なんか付けなくても心が動くというか、いや、格好付けないリアルさに心が動くのかもしれないですね。

温泉の神様にお参り。



ー 今、花田さんが取り組んでいる「SENPO MAP」もそういう生活を見て欲しいという思いから生まれたんでしょうか?「SENPO MAP」について教えて頂けますか?

花田:別府駅西口にある当ゲストハウス「In Bloom Beppu」から千歩圏内の面白いスポットや地元から愛される飲食店などを紹介するオリジナルガイドマップです。
温泉とか神社とかレストランとかコーヒーショップとか、沢山面白い場所があるんですが、駅裏は皆さん住宅街という印象があって、何もないと思っている方も多くて。
別府観光と言えば、地獄めぐりだったり、温泉だったりなんですが、観光客向けに商売をしているわけじゃないお店にこそ、この街の魅力が詰まっていると僕は思っていて。

SENPO MAPのスポットカード。



ー なるほど。どういう使い方をするんでしょうか?

花田:気になるスポットカードを手に取り、地図を片手にお目当のスポットまで歩きます。
スマホで検索ではなく、あえてアナログな地図(紙)というのが重要なポイントです。
たまには迷いながら、普段は通らない街の雰囲気を楽しむ。その先に待っているスポットを発見できたときの喜びやステキな出会いにきっと感動すると思うんです。
大型観光施設ももちろんいいんですが、もっとディープにもっとローカルな旅をすることが出来ます。
現在は30か所のスポットを紹介していますが、全部行くときっと別府の印象が変わると思います。観光客だけじゃなく、地元の人にも活用して欲しいマップです。要はディープな町歩きだと思ってもらえれば。

「登れますか?」「登りましょう!」で撮影した写真。



ー 別府という街は車がないと不便ですが、車からだと見えない、歩くことで初めて見える景色や魅力がある街ですよね。

花田:例えば、排水溝から湯気が上がっている風景も別府に住んでいると当たり前になってしまうと思うんですが、いやいや、これは凄いよと。
マンホールの上で温泉の湯気で温まっている猫がいたりとか(笑)やっぱり歩くことで「見つける」ことが出来るし、車の中からでは近所の人とも会話出来ないですからね。

In Bloom beppuの裏庭で。



ー つまり、ホテルやゲストハウスの中だけでは終わらない、街全体を一つの商業施設だと考えるやり方で旅人と別府人を繋ごうという試みが「SENPO MAP」なんですね。

花田:別府は顔が見える商売をしている方が沢山いるので、別府の人達にもいかに別府人が人懐っこくて素晴らしいかを再確認して欲しいですね。

ー 外からの目線を持っている人達が、別府に住んでいる人達にこの街の面白さを教えてあげることが今後は大事になってくるかもしれませんね。ちなみに花田さん一押しのスポットは?

花田:僕が一番感動したのは天満神社の先の境川です。そこを歩いた時に鶴見岳が見えて、別府湾が見えて、春は桜が満開で、ちょっと歩いただけでこんな景色があるのかと。そうやって出かけた先で出逢う人達も皆さん素敵で。

ー 別府はあまり桜というイメージがないですが綺麗に見れる場所もあるんですね。「In Bloom Beppu」という名前も桜や花から付けたんでしょうか?

花田:In Bloomというのは英語で「花が咲く」とか「満開の」という意味なんですが、実は実家のガス屋が「はなや」という名前でして。僕の名前も花田ですし。笑顔の花が咲くという意味で付けました。

In Bloom beppuにて。



ー いい由来ですね。最近はどういう方が泊りに来ていますか?

花田:韓国の方が一番多くて、博多からバスかレンタカーで来る方が多いですね。僕が熱く語る人間なんで「ここめちゃくちゃいいよ!」って勧めるんですが、ほぼ100%喜んでくれますし、また来たいと言ってくれますね。

ー 別府の魅力は人だと思うんですが、まさに花田さんの魅力に惹かれて来る人や、花田さんの人柄に触れてまた別府に来たいと思ってくれる人がいると思うんですよね。

花田:ありがとうございます。僕みたいに別府に移住して来た外からの目線はもちろん必要ですが、やはりそこは地元の方達と一緒にやっていきたいですね。
面白いのは大分市や日出にはない「おもてなしのDNA」が別府人には入ってるみたいで、ほんとに別府だけ違うんですよ(笑)
誰でも入れる公衆浴場の文化が昔からある街も別府くらいですからね。そういう意味でもコスモポリタンな街だと思います。
海外の人がいても当たり前、障害を持った人がいても当たり前、奇抜な人がいても当たり前。受け入れる姿勢はほんと日本一だと思います。

「飛べますか?」「飛びましょう!」で撮影した写真。



ー 別府人は別府を好きな人が好きだし、自分から動く人には優しい。全ての人がプレイヤーになれる街ですよね。
そういえば全然温泉の話を聞いてなかったです(笑)よく行く温泉を教えてください。


花田:地理的に近い九日天温泉に行きます。ローカルな温泉を体験したいお客様をたまにお連れします。

ー 九日天温泉の好きな所はありますか?

花田:駅近のマンションが建ち並ぶ住宅街で、その中に現れるローカル感満載の温泉です。公民館併設なのでお客様に別府の共同湯の特徴をお伝えしてます。

ー 九日天温泉でのエピソードが何かあれば教えてください。

花田:ある日、夕方5時前に入りに行ったところ、超激アツだったんです。その後、入ってきたおじさんがさらにお湯のコックをひねってジャンジャンお湯を出したのには驚きました。
おじさんと「結構、熱めなんですね〜」なんて話してたら、その後に入ってきたおじさんが「ぬり〜」って言ってさらに熱くされたところで、ギブアップ!
別府人、どんだけ熱湯好きやねん(笑)

この笑顔があるから、人が集まる。



ー (笑)ありがとうございます。最後にこれから別府に来る人へメッセージを。

花田:初めて別府に来る方にいきなりディープスポットを、というわけにもいかないと思うんです。
なので、まずはスパポートにスタンプを一つ押してみる所から始めてみるといいかもしれません。まさに自分で自分の背中を押す一歩になるんじゃないですかね?
なぜ別府温泉が凄いか、というのはやはり何か所か温泉を巡ってみて初めて分かるものなので。
そこをスタートにして、是非地元の方達と触れ合ってみて欲しいですね。

In Bloom beppu フォトギャラリー




フォトギャラリー




モデルプロフィール

名前 Name 年齢 職業 別府八湯温泉道名人
花田潤也 Jyunya Hanada 40歳 宿泊業「In Bloom beppu H24.6.27 3171代
H.29.10.13 7307代 2巡目
H.31.1.21 8208代 3巡目

クレジット



写真撮影・インタビュー:東京神父
撮影協力:九日天温泉、別府市、別府市温泉課、In Bloom beppu。

撮影のメイキングはこちらから。
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