BEPPU ONSEN ROUTE 88

No.07

指原勇

地獄原温泉 別府では地獄は天国

別府八湯温泉道は88か所の温泉を巡ってスタンプを押し名人になるという企画です。1巡で終わらない人も多い中、88巡するともらえる名人最高の称号を「泉聖」と言います。
2019年現在、約8000人の名人がいる中で「泉聖」になったのはたったの4人。そのうちの1人、初代泉聖がさっしーこと指原勇さん。別府ではレジェンドとも言われるさっしーはどのようにして泉聖になったのでしょうか?


Writer & Photographer : 東京神父

ようこそ別府鉄輪へ

さっしーさんが温泉道を始めようと思ったきっかけを教えてください。

指原:最初は温泉道の説明をチラシで見てね。88か所の温泉をまわると名人になれるというのを読んだ時に「こんなもんバカバカしくてやってられない」と思ったのがホントのところ。

だけど温泉は好きだったから、いつも1か所に入ってたのを全部違う場所に入って見たらどうなるんだろう?っていう興味本位で1回まわって見たの。7段になると無料券がもらえるというのを聞いて、その無料券をうまく使えば残りはそれを使えばいいなと。

それで、1回目は全部まわるのに大体3ヶ月かかることがわかった。終わる頃にはこれはもしかしたら面白いかもしれないと思うようになったね。

1巡では満足しなかったですか?

指原:1年で4回はまわれるなと思った時に、待てよと。朝風呂と夕方に入れば3ヶ月が1月半かと。それでまわって見たの。そうすると次は朝・昼・晩で入れば1冊1ヶ月かからないぞ、と思っているうちに1日10か所入ればまだまだ短縮出来るなという感じになってきた。

最短コースを探して3日で終わったこともあったね。フロマラソンの時に最短でまわって1日半だったよ。元々スパポートじゃなくてパスポートで同じようなことをやっていたから(さっしーさんは20年海外を飛び回っていた)それに比べたら簡単でしょ(笑)

あの頃は毎日が風呂に入る為の1日だったね




いや、でも1日半で88湯って凄いですよ。つまり、効率を求めていく過程でスタンプを集めるのが楽しくなってきたと。

指原:ペースを速めて行くと、お金がかかってきてね(笑)。少し困ったなと思ってたんだけど、拍車がかかったのは11巡目。

永世名人になった時に数字が出るんだよ。あなたは何番目ですよってね。自分が11巡した時は24番目だったかな。もうすでに温泉道が始まって10年以上経っていたのに24人しかいないのかと。それでその先が見たくなっちゃったんだよね。

1番精力的だった時は別府駅から歩いて明礬まで行って湯の里や鶴寿泉に入って、鉄輪まで降りて1通り全部入って、亀川まで降りてまた1通り全部入って、あの頃は毎日が風呂に入る為の1日だったね。


人がいない時は豪快に

ほぼ別府1周ですね(笑)まさか全部歩きですか?

指原:そうだね。基本ほぼ歩いてまわってたね。

す、凄いですね。(別府1周遊歩道ルートはおよそ26km)そうやってウォーキングも兼ねてひたすら温泉を巡っていったわけですね。

指原:11巡ごとに称号が変わって22巡目で名誉名人になるんだけど、その時にアレ?っと思ったんだよ。11巡した時の24番が5番になってたんだよ。今から17〜18年前の数字だけどね。真剣に88巡を目指している人が見えてきて、44巡目で3人に絞られて。44巡目の初代は自分じゃない他の人がなったんだけど、当時かなりもてはやされたんだよ(笑)

それで完全に火がついて、そこからは完全に3人の戦いになってきて、だたそのうちの1人は姿を現さないんだよ(笑)見えない敵との戦いだったけど、まわりのみんなも応援してくれてね。それで55巡、66巡、77巡目の時には1番になったんだよね。

お知り合いの助けも大きかったですか?

指原:1日何か所もまわるなら歩きじゃ大変だろうって言ってくれてね。「さっしー今どこにいるの?」って連絡してくれて車に乗せてくれたりね。鉄輪から亀川まで送ってくれたりね。そうこうしてるうちにあと3巡で終わるってとこまで来て、競ってたうちの1人がもうすぐ88巡終わるって噂も流れたりして、最後はプレッシャーも凄かったね。

たしかにそこまで頑張って来たら1番取りたいですよね。

指原:最後はとにかく毎日必死にまわって、結果的には2番手は半年くらい後に泉聖になったんだけど、自分は最終的に5年半で泉聖になったことになるね。


別府のさっしーこと、指原さん

5年半で最低でも7744回温泉に入ったということですね。

指原:最後は本当に大量生産(笑)表も作ってロスがないようにまわってたし、最後は10冊くらい同時に持ってまわってたから同じところを押し間違えたりしたこともあったね。ここまで来たら勝つしかないって気持ちだったね。もちろん勝ち負けじゃないんだけど、他の人達も同じ気持ちだったんじゃないかな。

当時はまだ誰も泉聖になっていなかったっていうのも大きいですよね。

指原:これは確かではないんだけど、おそらく泉聖になったであろう人とたまに温泉で会うんだけどね。「俺はもう引退するから」って言っててね。思わず「何を?」って聞いちゃったよ(笑)引退も現役もないでしょう、温泉巡りに。でも、競い合うのはもう辞めたってね。競うも何も風呂には毎日入るだろうって。そしたら「俺、温泉付きのマンションを買ったんだよ」だってさ。それはそれで幸せだよな。


昔の鉄輪

さっしーさんは今もまだ現役なんですか?

指原:今は104巡目だね。今は1日最低1か所はまわってるんだけど、1冊のスパポートで88日続いたことがないんだよね。どうしても被っちゃう。今はそれが目標かな。

1巡目は1冊のスパポートでまわるわけですから、1冊で88日続けるのもやろうと思えば出来ますよね。最初は簡単に出来たことが逆に難しくなるって面白いですね。

指原:何故まだ現役で続けてるかの答えにもなるんだけど、今は色んな情報が携帯でも見れる時代でしょ。この前も7775代名人(偶然にもルートハチハチで撮影した加藤さんがアップした記事)になりましたって記事がfacebookに上がっててね。今申請に行けば7777代取れるなと思って、観光協会に行ったわけ。

そしたらその後ちょうど1人来たみたいで、職員さんが「やっぱりさっしーさん、持ってますねー」って言うから「なんで?」ってしらばっくれてね。「ちょうど7777なんですよ!」「はぁー、そうなんですかー」ってね(笑)知ってて行ってるわけ、こっちは。

それ、ネタばらしして大丈夫ですか?(笑)

指原:ズルしてるわけじゃないしね。7775代を取ったのもたまたま見て行ったわけだし。自分が取りたい番号が取れるというのが何巡もしてる人の特典だろうね。スタンプを押し終わって申請にだけ出せばいいスパポートが常に10冊くらいあるから。7777とか8888とか、ゾロ目は狙いたくなるでしょ。


「君達5人いるんだから、バケツリレーしたらどう?」




たしかに。キリがいい数字は縁起も良いですしね。これだけ温泉に入っていたらそういう面白い話も沢山あると思うんですが、1番印象深かったエピソードを教えてください。

指原:東京から来た感じの5人の青年が竹瓦温泉に入りに来てた時にね、タオル買ってシャンプー買って、服脱いで温泉に入るんだけど、辺りを見渡して「あれ、俺シャンプー買ったのに、ここシャンプー出来ねえよ」って言うわけ。


シャワーがないってことですね(笑)

指原:そう。「鏡はここにあるのになー」「シャンプー出来ないな」ってみんな言ってるから、可愛そうになって「湯船のお湯使えば」って教えたわけ。そしたら鏡の所までお湯の入った洗面器を持っていって、1回頭を流したらまた湯船まで行ってお湯を汲んで、また鏡の前に戻るの繰り返し。あまりに面白かったから「君達5人いるんだから、バケツリレーしたらどう?」って冗談言ったけど、何往復もしてたね(笑)


スパポートはいつも持ち歩いている

別府の温泉は湯船の横に座って、直接湯船からお湯を汲んで全部済ませますからね。シャワーに慣れてると分からないですよね(笑)

指原:例えば、普通の家の風呂場は寒いでしょ。別府は温泉に行けば冬場でも暖かいし、東京の人なんかが言う「やっぱり温泉はいいなー」「温泉に行きたいなー」が日常の中にあるし、普通じゃないことをみんな普通にやってるのが面白いよね。普通は風呂場にシャワーあるしさ。別府の面白いとこだよな。


東京と別府を行き来する2拠点生活

今日はありがとうございます。最後にこれから別府に来る人へメッセージをお願いします。

指原:沢山いい温泉地はあるんだけど、100円で入れる温泉がこれだけある街は世界に別府だけ。イベントがある度にタダで入れるしさ。

温泉巡りしてみて思うのは、車を止められる温泉も多いから便利なんだけど、歩いてまわるのがオススメ。歩かなきゃ分からない景色が別府には沢山あるからさ。まぁ結論は馬鹿にしてたものにズッポリハマってしまったということだね。そういう沼みたいな魅力が別府にはあると思うよ。




MODEL PROFILE

名前:指原勇(Isamu Sashihara)
年齢:70歳
出身:別府
職業:定年退職して温泉巡り


CREDIT

タイトル:泉聖降臨
撮影日:2018年12月20日
写真撮影&インタビュー:東京神父

撮影協力:地獄原温泉、別府市、別府市温泉課、お好み焼き桃太郎、本田さん、スーパーマーケットことぶき屋

※温泉や個人の情報は全て撮影当時のものです。

ONSEN INFO

地獄原温泉

鉄輪温泉街のいでゆ坂下部に位置する共同浴場。泉質は塩化物泉で殺菌効果があるため外傷に効くといわれている。古くは「原温泉」「薬師温泉」とも呼ばれていた。明治初年から浴場があり、昭和初期までは混浴だったという。



住所:大分県別府市風呂本150-2


営業時間:6:30~21:00(年中無休)


入浴料金:100円


泉質:塩化物泉


地図:湯巡りマップ


公式HP:別府八湯温泉道サイト



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