BEPPU ONSEN ROUTE 88

No.08

首藤渉、江口香瑠、安部仁晴

七ツ石温泉 石垣原合戦で激戦地にもなった

別府という街は観光地という表向きの楽しみ方でも充分満足出来る街ですが、本当の魅力はもっと深い場所にあります。興味を持って、掘ってこそ別府の本当の魅力が見えてきます。
お気に入りの洋服や温泉を探すように、レコードをディグるように、別府のファッションモンスターと一緒にガイドマップには載っていない別府を覗いてみましょう。


Writer & Photographer : 東京神父

温泉横の小さな公園にて

まずは三人の出逢いを教えてください。

渉:僕がやってる別府の店(自身の洋服ブランドも扱うセレクトショップ)に2017年の3月頃、江口君(江口香瑠)がどこからか情報を聞きつけてやってきたんですよ。

香瑠:市役所に行く用事があって、いつもは決まった道を通るんですけど、ちょっと別府を探索したいなと思って見つけたのがわたるさん(首藤渉)のお店でした。もともと服に興味があったし、外から見ててお店の雰囲気がやばい感じだったんで「ここやべーな」って思いながらお店の外をうろうろして一旦市役所に行ったんです。その後また戻ってきて、もう一回入ろうか迷ってからやっとお店に入ったんですよね。

だいぶ不審者ですよね(笑)それが初めての出会いですか?

香瑠:そうですね。元々服を作りたいと思ってたし、色々お話も聞きたかったんで、思い切って声をかけたんです。

それまでは服を作ったことはなかったんですか?

香瑠:全くなかったですね。ただ着るのが好きだったって感じで。

なるほど。まず首藤君と江口君が出逢ったと。

渉:そうですね。それで別府を盛り上げるためにファッションショーをやろうってことになって、江口君がAPU(立命館アジア太平洋大学)の学生なんで、モデルを集められるってことでファッションショーをやることになったんです。それで、2017年の7月15日に永久別府劇場で初めてのファッションショー(beppu fashion day 2017)をやったんです。


首藤君のアトリエにて

僕が撮影したbeppu fashion dayの初回ってことですね。

渉:はい。その後にジン君(安部仁晴)と出逢う感じです。

仁晴:僕が中学を卒業してすぐの時だったので、確か2018年の3月頃です。首藤さんのお店の近くにolovoっていうカレーが食べられる雑貨屋さんがあって、僕のお母さんがそこで場所を借りて月一くらいで筆跡診断をやってたんですよ。

僕は服を作りたいから高校には行かないって言って、中学を卒業してすぐフリーターみたいな感じだったんですけど、お母さんがolovoの方に僕の話をしたら首藤さんのお店を紹介してくれて、母と一緒にお店に行って、首藤さんに服作りを教えてくださいってお願いしたのが初めての出会いですね。

面白い出逢いですね。二人ともこのお店に引き寄せられたみたいですね。

一同:そうですね。

香瑠:万有引力(首藤君の店で制作しているブランド)のくるみさんもそうですし、ジン君以外にも、服作りたいってお店に来た人はいましたね。ここってきっとそういう場所なんです。


煙草の煙も湯けむりのよう

お店で服を作ってそれを売るっていうスタイルのお店ってなかなかないですし、この雰囲気はアンテナ立ってる人は見逃さないですよね。3人は別府でファッションに携わってますが、別府のファッションってどんなイメージですか?

渉:別府でストリートカルチャーができればいいなってずっと思っていて。かと言って、これって別府っぽいよねってファッションを定義づけするのは難しいと思っていて。まずは、服が好きな人や活動的な人が集まってきてコミュニティーが出来たら、そのうち出てくるんじゃないかなって思って今もやってます。

それで今回2回目のファッションショー(beppu fashion day 2018)をやったんですけど、当て付けでもいいから「別府らしいスタイル」を何か一つ決めようってなったんですが、結局これっていうのが出てこなくて(笑)じゃあ、その「イメージできない」とか「つかみどころのない」感じをあえてイメージできないままごちゃ混ぜにしたらどうかと。

それでテーマを四次元にしたんですね?

渉:そうですね。今回参加した四人のブランドもそれぞれみんなテイストも違うし、それはそれで縛らなくてもいいし、そんな風にやってるのがまさに別府っぽくていいんじゃないかなって。


beppu fashion day 2018のモデル達。

なるほど。これを着てるから別府っぽいじゃなくて、多種多様なことをやってるその活動やスタイルが別府らしさってことなのかもしれないですね。

香瑠:ただ、カルチャーとして根付かせるためには「これ」っていうのも無きゃいけないと思っていて、クラウドファンディングを立ち上げてみんなが着やすいTシャツをデザインして作ったりもしました。自分たちがそれぞれ自由に作ったものと、まわりの人たちに分かりやすく受け入れてもらえるタイプのものと2パターン作って反応を見たりしてました。


七ツ石温泉にて

個人的には伝統と流行りを混ぜて不易流行みたいなことを洋服でもやって欲しい。別府ならではの。例えば着物とかで。

渉:江口君が前にやってたブランドはそんな感じでしたね。今では全くテイストが変わってますけど。

香瑠:僕が前にやってたブランドは着物を使ったものを作ってましたね。2017年のファッションショーのベースは着物でした。

どうしてテイストを変えることにしたんですか?

香瑠:前のブランドをやってた時は学校で社会問題について学んでいて、そこから日本の文化とかに興味を持って、それらを服と結びつけて、若者っぽくオシャレに発信したいなって考えたんです。

それで、イギリスに留学した時にもっと深掘りして学ぼうと思ったんですけど、逆に視野が広がりすぎちゃって。まずは自分が本当にやりたいことにフォーカスしたデザインをやりたいって考えた時に今のデザインになった感じです。でも、将来的にはコレクションごとにテーマを変えたりして、色んなテイストを出していきたいですね。

進化してる感じがいいですね。仁晴君はまだ16歳だけど、これからも別府で洋服を作っていく感じですか?

仁晴:そうですね。まずはここで作っていきます。


別府だとピンク色の髪でも何も言われなくて




進学せずに現場でファッションを学ぶというのは、普通の16歳ではなかなか経験できないことですよね。この別府という濃い街でしか経験出来ないことを今後の服作りにも活かせたらいいですね。

仁晴:今は髪の毛ピンク色なんですけど、大分にいた頃はサザエさんに出てくるタラちゃんみたいなマッシュルームカットにしてて、街を歩いてると指差されて笑われることもあったんです。でも、別府だとどんな髪でも何も言われなくて、視線を感じることもなくて、変わってる人でも受け入れてもらえるような雰囲気というか温かさがすごく良いなって。


別府ってそういう街ですよね。「受け入れる」という文化がある街。

仁晴:別府は個人を尊重してくれる雰囲気があると思います。雰囲気というか、実際にそうなんですけど(笑)


ファッションが大好きな三人

僕は多種多様という意味で別府はリトルニューヨークだと思っていて、APUが出来て多様性が増して、さらに面白くなりましたよね。学生のイベントで多国籍のモデルを集めて、温泉施設を借りて、インプロビゼーションなノイズ音楽を生演奏して、ランウェイを歩くだけじゃないファッションショーをやるって都会でもなかなか出来ないと思います。

渉:そうですね。別府だから作れた雰囲気だと思ってます。


すっかり温泉の話を聞くのを忘れていました

今日はありがとうございます。最後にこれから別府に来る人へメッセージをお願いします。

渉:別府はちょっと掘ったら温泉が出てくるじゃないですか。それと同じで、ちょっと行ってみようかなって感覚で路地裏をフラッと歩くだけで色んなお店があるし、面白い人と出会えますよね。

掘って(探して)もらわないと出会えない側の僕からすると、どんどん掘りに来て欲しいですね。ちなみに僕の一押しは書肆ゲンシシャです。



香瑠:別府に来てすぐの時は、全然温泉に入るタイプじゃなかったんですよ。行くとしても大きな施設の温泉ばかりだったんですけど、最近、わたるさんのお店に住み始めたんですけど、近所の小さな公衆浴場入るようになってから温泉にハマってしまいまして(笑)

ガイドマップを見て行くみたいな王道な観光も楽しいですけど、地元の人と同じ目線でブラブラ街を歩いてみて欲しいですね。



仁晴:僕は大分出身なんで、ちょこちょこ別府に温泉入りに来たりはしてたんですけど、毎日通うようになってから首藤さんや香瑠さんに色んな場所に連れて行ってもらって、ディープな場所や人に出会って刺激を受けてます。

なんというか、温泉みたいに「湧いてる人」が別府には沢山いるんですよ。もちろんいい意味で(笑)だから、二人が言ったみたいに自分から進んで刺激を受けに来て欲しいです。別府は本当に掘ると面白い街だと思います。





MODEL PROFILE

名前:首藤渉(Wataru Shuto)
年齢:31歳
出身:別府
ブランド:TONTONTONTUTU
(写真右)

名前:江口香瑠(Kaoru Eguchi)
年齢:22歳
出身:東京
ブランド:KAORU EGUCHI
(写真左下)

名前:安部仁晴(Jinsei Abe)
年齢:16歳
出身:大分
ブランド:medjed
(写真左上)


CREDIT

タイトル:ここ掘れBeppu
撮影日:2018年12月19日
写真撮影&インタビュー:東京神父

撮影協力:七ツ石温泉、別府市、別府市温泉課、TONTONTONTUTU、KAORU EGUCHI、medjed、Beppu Fashion Day

※温泉や個人の情報は全て撮影当時のものです。

ONSEN INFO

七ツ石温泉

古くは七ツ石と呼ばれた場所。巨石と神社と公園と民家と温泉が同じ場所にある何とも別府らしい公衆浴場。温度を保つためにビート板が湯船に浮く独特な温泉。



住所:大分県別府市荘園2-3


営業時間:7:00〜10:30、15:00〜22:00
(年中無休)


入浴料金:100円


泉質:単純泉


地図:湯巡りマップ


公式HP:別府八湯温泉道サイト



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