BEPPU ONSEN ROUTE 88

No.48

赤松彩乃

海門寺温泉 観光客も多く訪れる市営温泉

今年でAPUを卒業する彩乃ちゃん。卒業後はCAを目指し、まずは1年間マレーシアで訓練することが決まっている。別府に来るまでの日々、そしてAPUでの4年間を年ごとに振り返ってもらいました。普段は夢たまて筥によく行くそうですが、今回は初めて入る海門寺温泉で撮影してきました。


Writer & Photographer : 東京神父

夏目ハイツ前にて

まずは別府に来るまでの簡単な生い立ちを教えてください。

彩乃:中学までは勉強して、バスケットして、どこにでもいる普通の学生だったと思います。人と比べて落ち込んだり、自分の強みもよく分からず、自信がなかったですね。
高校は英語科に行ったんですが、高校2年生の時にカナダに1年留学したんですけど、その頃から「人と比べる」ということをしなくなって徐々に変わっていきました。留学先では日本人が私1人しかいなかったのでそれも大きかったですね。
その経験があって、自分が思ったことは言うようになったりとか、人と比べることをしなくなったので「私は私の人生を生きる」って胸を張れるようになりました。

高校生でそこまで思えるのは凄いですね。元々の気質もそうだったんじゃないですか?芯の強さとか負けず嫌いみたいな部分があったり。

彩乃:そうですね。気は強い方かもしれません。そういう意味では日本人ぽくはないかもしれないですね。最初は海外の大学に行こうかと思ってましたし。

そこからどうしてAPUに入学することに?

彩乃:私の先輩がAPUに行ってて、色々話を聞いていたのもあって、親とオープンキャンパスに行ったんです。そしたら親の方がAPUを気に入って「あんた、ここ行き」みたいな(笑)留学の経験も活かせるからというのもあってAPUに決めました。最初は「大分県ってどこだっけ?」くらいの感じでしたね。


別府トキハの屋上

なるほど。彩乃ちゃんは大学生活をコロナ禍で過ごした年代だと思うんですが、今年でAPUを卒業ということなので、せっかくなので年度ごとに思い出を振り返ってみてもらってもいいですか?

彩乃:分かりました。やってみます。多分1年の時の話がほとんどになっちゃいますが(笑)

2020年(1年生)




彩乃:大分が九州だってこともよく分かっていないくらいだったので、地元の同級生からは「島流し」くらいの感覚で見られてました(笑)入学時期はちょうどコロナが流行りだした頃でした。(第1例目の感染者が報告されたのが2019年12月)

入学式も結局出来ずで、大分にきたのも6月でしたね。APUに入学した理由の1つに外国人と交流出来るっていうのがあったので、リモートリモートでリアルな会話が出来なかったので、そこは結構辛かったですね。

大分に来るまではライターのバイトもしていたので、それを活かせることを何かやりたくてインスタのストーリーとかにライターをやっていることを書いてました。それをたまたま見たAPUの先輩から「ライターやりませんか?」と誘われて、その集団とオンラインで話すことになったんですが、そこで凄い衝撃を受けて。APUの大学生ってこんなに優秀でアーティストコレクティブなことをやっている人達がいるんだってビックリしました。

話の筋道もしっかりしてるし、言葉の使い方も大人だし、それぞれが個性と特技を持っていて、とにかく全員が芯を持っているって感じでした。

彩乃:神父さんも仲がいいと言ってた平末健斗さんもメンバーの「youth」という集団で、その人達と出逢ったのはとても大きかったですね。APUから支援金をもらって、学生だけでWEBドラマを作ろうっていう話があって、そのお店紹介やインスタのキャプションなどを担当して欲しいと言われて私も参加することになりました。

最初の1年は大学生というより、ドラマ作りをしてた感じですね(笑)授業もほとんどオンラインでしたし。


別府タワー

彩乃:ひたすらGoogle mapを見てバスに乗って別府を歩いて、飲食店や温泉に行くってことをやってました。大分に来るまでは駅やバス停に行けばすぐに電車やバスに乗れましたが、大分だとちゃんと時間を調べて行かなきゃいけないので、カルチャーショックでしたね。あと別府に来るまでは飲食店の方と仲良くなるなんて経験はほとんどなかったんですけど、お店の方も皆さんとても気さくで優しくて、それは別府ならではだと思いました。

ドラマの内容もデジタル化した世の中で学生も疲れるよね、みたいな内容だったので自分にもリンクした部分が沢山あったので、ドラマ制作を通して別府をより好きになっていった感じですね。


別府北浜にて

彩乃:少し矛盾しますが、大学生じゃ出来ない経験を沢山させてもらったし、でも大学生だからこそリスクを考えずに出来たので、この1年は私にとってとても大きな経験でした。

「youth」の活動は最初から1年限定と決まっていたので、ドラマの最後にリアルなイベントを別府のバー「the HELL」で開催してそれを撮影して終了しました。今もYouTubeに映像がアップされているので是非ご覧になってみてください。

正直1年生の時が濃すぎて、この先の大学生活で感動することなんてないと思うくらいでした。1年で起承転結しちゃいましたね(笑)

2021年(2年生)




彩乃:で、やっぱりそうなっちゃったんですよね。満足しちゃったんですよね。それでも「youth」のメンバーの原点が「AUA」っていう団体だって知って、そこに入ったんですよね。でも、その団体もコロナでストップしてる状態で。直接会ったり、リアルなイベントがなかなか出来ない状況が続いて。2年生はスランプというか、普通の大学生活を送ってましたね。

コロナの時期と被った大学生活を「普通」っていうのもおかしな話だとは思うんですが、渦中にいたらやっぱりそれが普通になりますよね。目上の方は「かわいそう」と言いますが、結構そこは冷めているというか、冷静かもしれないです。

彩乃:その後、AUAの副代表になったんですが、代表の方と馬が合わなくて(笑)でも、そこで人との関わり方とか、言葉の使い方とか、そういうのを学ばせてもらいました。

あの頃は「伝え方が9割」みたいな本をずーっと読んでました(笑)どうしても、直球で言っちゃうんですよ。2年生は自分を丸くしていく期間だったと思います。アバウトになるのは決して悪いことだけじゃないっていうのも、別府に来てから思うようになりました。


撮影したのは「BEPPU ART MONTH」の時期

2022年(3年生)




彩乃:3年生になってからは別府に来てからやってた結婚式場のバイトを再開させた時期で、そこでも人間関係を色々と学ばせてもらいました。基本、別府の方は優しくてゆったりしてる方が多いので、私と真逆なんですよね(笑)関西弁だから余計にキツく思われたり。

彩乃:でも、自分では絶対に出来ないと思っていた計算や進行管理を任せてもらったり、少しずつ職場の方に認めてもらえたり、成長する機会を頂けてると思います。

3年生はずっとバイトしてた気がしますね。このバイトは別府を離れるまでやり遂げたいなと思っています。

2023年(4年生)




彩乃:就職する気が全然なくて(笑)キャビンアテンダントになりたいって夢はあったんですが、外資系CAは身長基準が足りなくて。でも「就活せな」って感じでフラフラしてた時に、知り合いからミス・アースの大分大会に出てみない?って言われたんですよね。

色々挑戦してみたかったんで参加してみたんですけど、レベルが凄い高い方が何人かいて。それでもうマインドを変えて1番ビフォーアフターが凄いやつになってやる!と思って2か月自分を必死で追い込んだんですよね。そしたら、その2か月で姿勢が良くなったのか、身長が伸びてCAの基準を満たすことが出来たんですよ(笑)


とってもいいお湯

彩乃:今までは身長が足りないから諦めてたんですけど、親に「身長がクリアしたから一般企業への就職活動を辞めてCA目指す!」と言い切りました。親もびっくりしていましたが、試験にも合格したので来年から1年間訓練生として飛行機全般の事を猛勉強します。実質もう一年学生をやるようなものですね。(笑)

APUでの4年間を含めたこの22年間で共通して思うのは、本当に人との出逢いに恵まれているな、ということですね。小学生からの友人もそうですし、APUで出逢った人や「youth」のメンバー。そして、何よりこの街の人達に成長させてもらいました。別府の人達には感謝してもしきれません。

ありがとうございます。僕がCAの面接官だったら「合格!」っていいそうな話ですね。いい出逢いは出逢いを大切にする人に訪れるものだから、きっと別府にも彩乃ちゃんに出逢えて良かったって人が沢山いると思います。さて、ここからは温泉についても聞いてみたいんですが、まずは好きな温泉を教えてください。

彩乃:元々温泉に興味があるタイプではなかったので、公衆浴場はハードルが結構高くて(笑)ずっとシャワー人間でしたし。いわゆる観光施設の方が落ち着くので、「ひょうたん温泉」とか「夢たまて筥」に行くことが多かったです。1番好きなのは夢たまて筥ですね。

日本人全員が温泉好き、お風呂好きなわけじゃないですからね(笑)

彩乃:ひょうたん温泉に行った時に、すごく浄化される気分を味わって。湯治って言葉を知ったのもその頃だったので「これがととのうってことかー」みたいな。サウナじゃないので「ととのう」とはちょっと違うんでしょうけど、湯治って本当にあるんだなーと実感しました。それで温泉に行くのが楽しくなったのはあります。

こんなに床にゾッコンになったのは人生初です(笑)




ひょうたん温泉は僕も大好きな温泉です。

彩乃:温泉の力を実際に感じた良い経験でした。

でもひょうたん温泉より、夢たまて筥の方が好きなんですね。それは何か理由がありますか?

彩乃:結婚式のバイトの子達とバイト終わりに行ったりしてたんですけど、夢たまて筥って床が畳なんですよ。それに衝撃を受けて。夢たまて筥の床が好きになったというのが正しいかもしれないです。こんなに床にゾッコンになったのは人生初です(笑)

床にゾッコンはなかなかのパワーワードですね。温泉よりも床が好きだと(笑)

彩乃:もちろん温泉も好きですよ(笑)首だけ出す蒸し湯も面白いですし、別府の温泉には珍しくTVもついてるので、ゆったり入れるのが好きです。サウナもあるので、本物のととのうを体験したのも夢たまて筥でした。別府のおかげでお風呂も温泉もサウナも好きになりましたね。

今日撮影した海門寺温泉は初めて入ったと思うんですが、どうでしたか?

彩乃:ローカルな温泉に行ったのが久しぶりだったので、新鮮でとてもリラックス出来ました。ぬる湯とあつ湯というより、あつ湯と超あつ湯って感じでしたが、おかげで発汗がとても良くなって代謝が上がった気がします。

別府の温泉はやっぱ熱いですよね。別府出身の僕でもそう思いますから。

彩乃:当たり前にこの熱さに入ってるおばちゃんとか尊敬します。そもそも温泉に誰かと一緒に入りにいくっていう感覚があまりなかったので、日頃から裸の付き合いをしている別府の人達が人懐っこいのも頷けるなと。関西だとバイト終わりは「飲み行こう」になりますが、別府だと「温泉行こう」になるのが新鮮でしたね。

温泉はもちろんだけど、彩乃ちゃんが思う別府の魅力ってなんだと思いますか?

彩乃:いつでも心が休まるというか、生き急いでないのがいいですね。それこそ温泉みたいに人も街もゆったりしてるのが魅力だと思います。私みたいにあつ湯みたいな性格の人間からすると、そのゆるさにとても癒されます。いい意味でアバウトですよね。

僕は普段から「別府は国だ」って言ってるんですが、そのアバウトさも魅力の1つですよね。

彩乃:APUがあるからっていうのもありますけど、多分こんなに海外みたいな日本の田舎ってないと思います。

今日はありがとうございます。最後にこれから別府に来る人へメッセージをお願いします。

彩乃:住んでみるのが1番いいと思いますけど、観光で来るなら海鮮を食べて欲しいですね。うちの親も同じことを言ってたんですけど「地元の高級なデパ地下に売ってる魚が、別府だとスーパーに売ってる」くらい海鮮がめちゃくちゃ美味しいのでオススメです。

あとは「非日常を本気で味わう」つもりで来て欲しいです。デジタルデトックスもそうだし、お店の人に話しかけてみるとか、普段は着ない服を来てみるとか。旅行でしか味わえない楽しみが別府だとより一層引き立つと思うので。それはやっぱり別府の人達のアバウトさが「適当」や「雑」という意味じゃなくて「愛嬌」になっているからだと思います。


海門寺温泉そばの「蔵ギャラリー喫茶しばた」にて

MODEL PROFILE

名前:赤松彩乃(Ayano Akamatsu)
年齢:22歳
出身:兵庫
職業:学生(APU)


CREDIT

タイトル:アバウトさを学ぶ街。
撮影日:2023年10月26日
写真撮影&インタビュー:東京神父

撮影協力:海門寺温泉、別府市、別府市温泉課、川窪さん、蔵ギャラリー喫茶しばた、youth
全17話 Webドラマ「to BE」

※温泉や個人の情報は全て撮影当時のものです。

ONSEN INFO

海門寺温泉

「海門寺」という名前は「寶生山海門寺」というお寺が由来。古くは海門寺公園温泉とも言われており、昭和11年に市営温泉に。平成22年2月にリニューアルオープン。施設全体をバリアフリーとし、外観は隣接する海門寺公園と調和した和風の外観になっている。温度の異なる「あつ湯」と「ぬる湯」の2種類の浴槽がある。



住所:大分県別府市北浜2-3-2


営業時間:6:30~14:00、15:00〜22:30


入浴料金:大人250円、子供100円


泉質:炭酸水素塩泉


地図:湯巡りマップ


公式HP:別府八湯温泉道サイト



BEPPU ONSEN ROUTE 88