BEPPU ONSEN ROUTE 88

No.51

山田梨乃

鉄輪むし湯 歴史ある蒸気風呂

APUを卒業して福岡の会社に就職が決まった梨乃(りの)ちゃん。ミスアース大分代表の見た目とは裏腹に「野生味」に溢れた性格ゆえに必然的に辿り着いた場所、別府。彼女が見た別府の街の面白さとは?梨乃ちゃんがよく通っていたという鉄輪温泉のむし湯で撮影しました。


Writer & Photographer : 東京神父

鉄輪筋湯通り

まずは別府に来るまでの簡単な生い立ちを教えてください。

梨乃:出身は千葉県佐倉市っていう田舎町です。東京から成田空港に行く時に乗る京成線で、田舎になってきたなーと思ったら佐倉です。千葉の田舎の入口かなと私は思ってて。自然豊かな環境で育ててもらいました。
小学生の時は田んぼの畦道でザリガニ釣りしたり、学校の裏に石井さんっていうおじいちゃんが持ってる森林があって、そこで勝手に栗拾いしたり、野うさぎを追いかけたり、割と野生味溢れる環境で育ちました。
新興住宅街だったので、学校自体はすごく新しい学校だったんです。綺麗なコンクリート打ちっぱなしみたいな。田んぼもあるし、里山もある。でも少し行ったら、ショッピングモールやマックとか、GUとか、ユニクロとかはある。電車も30分に1本はあるし、便利な田舎って感じですね。とてもいい環境だったなと思います。

今の梨乃ちゃんの性格まんまって感じの環境ですね。ナチュラルとアーバンが共存してる、みたいな。

梨乃:そうかもしれないですね。田舎すぎず、都会すぎず、別府もそんな感じですよね。生徒も1学年で60人弱ぐらいしかいないから、必然的にみんな仲良くて。男女関係なく遊ぶみたいなのは、小学校の時から変わらないですね。そんな環境で育ったので、見た目と中身のギャップがあるとはよく言われます。


ギャップありますよね。コミュニケーション能力も高いですし。別府やAPUと言うよりも、その奔放さは小さい頃から育まれてた感じなんですね。だから別府に辿り着いた、とも言えるかもしれないですね。

梨乃:ママが国際線のCAだったのもあって、多国籍なママの同僚の方達に遊んでもらうことも結構あったので、英語に触れる機会もちょくちょくあったし、他の言語を教えてもらったり、日本的な考え方にならなかったのも環境のせい、いや、おかげかなと思っています(笑)
家族旅行でグアムに行くことが多くて、グアムのおじちゃんおばちゃんたちが、娘のように可愛がってくれて。 グアムってフィリピン系のアメリカ人が多いんですよ。だから、英語以外にもフィリピン系の言葉も教えてもらいました。タガログ語とか。小さい頃から色んな言語に触れていたので、様々な文化に興味を持つようになりました。小さい頃は他の言語をとにかく使いたかったので、ママとはルー大柴さんみたいな会話してました(笑)
そんな環境で育ったので、知らないことを知りたいという気持ちが昔から強かったです。とりあえず試してみる、みたいな気持ちは今も強く持ってますね。 あと自己主張することの大切さみたいなものは、グアムのおじちゃんおばちゃんたちから教わりました。


好きなものを好きだ!って言えることってとても大事なことだと思います。日本だとなかなか許されなかったりしますけどね。

梨乃:日本では生きづらさを感じることもありますよね。「自分の意見は言わないと何も変わらない」「なんでもまずはやってみないと好きか嫌いかも分からない」っていう考え方は彼らから教わった部分かなって思います。今も仲良くしてくれてる家族みたいな存在です。


鉄輪ヤング会の皆さんと

梨乃ちゃんから感じる「芯の強さ」がどこから来てるのか、少し分かった気がします。すでにかなり面白い人生ですよね。

梨乃:ありがとうございます。そうは言っても日本に生まれ育っているので、小学校の高学年になると夏期講習みたいなところに行くじゃないですか?「みんな行ってるから一旦行っとくか」みたいな受験モードに私もしっかり流されて(笑)中学受験してママが行ってた中学に通うことになって。それが東京にある中高一貫校だったので、実家から2時間かけて通ってました。

ということは、往復4時間を6年間も?凄いですね。

梨乃:そうですね。中1から高3の12月までずっとバトン部に入って、朝練も夜の部活もやっていたので、中高は多忙でしたね。うちの学校のバトン部は全国大会金賞を毎年取れるような部活だったので結構練習もハードにやってました。1年生の時は40人くらいいた部員も最後は5人とかになってましたね。
ピアノとかバレエとかスイミングとか色々習い事もしてきたんですが、結局何かの区切りでやめることが多かったんですよ。バトン自体はあんまり上手い方じゃなかったですけど、意地で高3の最後まで続けるみたいなのは自分の中で決めてました。下手だからやめるとか、しんどいからやめるとか、そういう理由でやめることだけはしたくなかったですね。

「ママ、私ここに来ることになるわ」




中高時代はバトンに明け暮れて、そこから大学へ入学するタイミングで別府に来ることになるわけですよね。

梨乃:そうですね。部活と受験勉強をどうやって両立しようみたいな時期に、モチベーションの上がるワクワクするような大学が東京で見つからなかったんですよ。先輩たちは大学よりカフェ巡りに夢中になっていて(笑)別にカフェ巡りするために大学行くわけじゃないんだよなーとか思ってました。
都会の目に見えるものだけに価値を置く感覚にモヤモヤすることも多かったので、ちょっと東京が合わないのかもと思って。じゃあ、ちょっと関東を出てみようと。大阪とか京都だったら、都会だけど全然違う文化圏だから住みやすいんじゃないかと思ったんです。それで関西の大学を見ていたら、まず立命館を見つけたんですよ。自由な校風でいいなと。

でも、立命館自体は京都の大学ですよね?

梨乃:立命館のサイトをくまなく見ていたら、間違ってAPU(立命館アジア太平洋大学)のページに飛んだんですよ。「何ここ!面白そう!」ってなってそこから完全にAPUにシフトしました。オープンキャンパスの日程とか調べて、両親に「ちょっと学費高いですけど、この大学に行きたくて」とプレゼンして。じわじわといい所をオススメしていったら、最終的にはママが「ここ、私が行きたいかも」っていうぐらい惚れてくれて(笑)
じゃあまずはオープンキャンパス行こうってなりまして。部活のみんなにちょっと無理を言って、ママと二人でオープンキャンパスに行ったんですけど、大分空港に着いて外に出た瞬間に「ママ、私ここに来ることになるわ」って直感的に言ってましたね。


Hiromiya Toji Stay

野生味があるからこそ、直感力が強くなるのかもしれないですよね。その後、本当に別府と運命的な出逢いを果たすわけですね。

梨乃:九州は修学旅行でしか来たことなかったんですよ。長崎の眼鏡橋でチリンチリンアイスを食べたぐらいしか記憶がなくて。それなのにビビっと来たんですよね。その後、オープンキャンパスに行って、自然のある環境とか、学生の姿も見て「あー、もう絶対ここ来るわ」って思って。それでAO入試でAPUに来ることになりました。


別府に引き寄せられた感じがありましたか?

梨乃:別府って気が強いじゃないですか。氣って言った方がいいかな。そのエネルギーの強さに引き寄せられる人はいると思いますし、言葉では表せない感覚的な街だと思います。


鉄輪むし湯

僕は梨乃ちゃんのその感覚的な部分を面白いと思ったので、ひょうたん温泉のプロジェクトにもお誘いしたんですけど、意思の強さみたいなのが表情や見た目にも出てるから目立ちますよね。日本っぽくないというか。だからこそ別府と惹かれ合うのかなとも思いますけど。

梨乃:日本の包み隠すみたいな文化が嫌だったんですよ。でも今はコロナのおかげっていう表現もおかしいですけど、おかげで日本に留まらざるを得なくなったし、それで日本のことを知れたから日本が好きになりました。昔は自分の中で海外がキラキラしすぎてて、日本に魅力を感じていなかったんですけど、なんと日本で就職までしちゃうという(笑)昔の自分からは考えられないですね。

「カオスが秩序な街」




小さい頃から日本以外の色んな人たちと交流していたら、そう思うのも仕方ないかもしれないですよね。そういう意味で言うと、別府は全然日本っぽくないとも言えますよね。

梨乃:そうですね。別府に来て視野が広がったのはあると思います。親戚の1人が赤十字とかに行ってる女医さんなんですけど、その方に「まず日本のことを知らないと、他の国に行った時に何も説明できないよ」って言われて。その通りだなと思ったんですよね。日本の何を説明できるかって言われたら、何も説明出来なくて。それでまずは日本のことを知ろうと思って、47都道府県全部行きました。もちろん目的はそれだけじゃなかったですけど、今は拙いながらに日本の良さを伝えることが出来ると思います。


石菖(せきしょう)の上で蒸されるむし湯

その行動力も凄まじいですよね。もちろんコロナがあったことも大きかったとは思いますが、それ以外に日本を出なかった理由は何かありますか?

梨乃:結果的にですけど、別府にいたから日本の良さに気付けたのはあるかもしれないです。交換留学行く気満々でAPUに来て、1回も行かなかったですし(笑)
別府で沢山の面白い人に出逢えたのは大きかったです。それこそ神父さんもそうですけど、花田さんとか、今携わらせていただいてるOKM8(おおいた女将8)の女将さんたちとか、本当に沢山の方に良くしてもらって。
人との出逢いに恵まれたからこそ、別府のディープな場所も知ったし、ローカルに溶け込む面白さも知りました。初めてふるさとの感覚を知ったのが別府や大分や九州って感じでした。
今は福岡の会社で働いているんですけど、1社だけ就活したんですよ。「ふるさとを盛り上げる」というビジョンを持った会社だったので、面接の時に「この会社にしか入りたくないです」という話をしました(笑)

別府が肌に合ったんですね。別府がふるさとである僕からすると、とても嬉しい言葉です。梨乃ちゃんから見た別府はどんな街ですか?

梨乃:別府のことはいつも「カオスが秩序な街」って表現してます(笑)
合わない人もいると思います。でも、その混沌が私には心地良かった。日常がカオスになるとめちゃくちゃ面白くて。物理的な意味でも感覚的な意味でも「こんな道があったんだって」思わせてくれる街なので、毎回楽しいし、毎回ワクワクするんですよね。

分かります。別府って歩くと発見がありますよね。新しい風景が広がるって意味でも、自分の内面を発見するって意味でも。

梨乃:その両方を感じさせてくれる街ですよね。あとは温泉の文化だから裸の付き合いになるじゃないですか。必然的にみんなオープンなんですよね。ちょうどいい距離感。なんで別府がそんなに好きなの?って言われたら「カオスが秩序だから」って言うんです。

別府はカオスですよね。本当に色んな意味で。それが秩序になってるっていうのはいい表現ですね。確かにそうかもしれません。ひょうたんやってた時もカオスでしたね(笑)梨乃ちゃん自身もそうとうカオスですし。ひょうたん温泉のプロジェクトをやってたのは何年生の時でした?

梨乃:2年生の時でしたね。神父さんが「いいね、君!」って言ってくれて(笑)プロジェクトに呼んでくれたんですよ。

この子の感性面白いなーと思って、参加しない?って頼んだのは覚えてるんですが、一番最初はどこで会ったんでしたっけ?

梨乃:どこでしたっけ?神父さんのインスタ遡ってみよっと(笑)

(二人でしばしインスタを見る)あ、思い出した。ゴミだ。

梨乃:あーゴミ!(笑)クリーンナップの!そうでした。別府の海を掃除してた時ですね。ちょうどミスアースの時だから2021年です。

あのインパクトを忘れるって。反省します。ひょうたん温泉のプロジェクトでは企画立案から動画のモデルさんもやってくれましたけど、どうでしたか?

梨乃:お互いに反省ですね(笑)
ひょうたん温泉のプロジェクトは今まで利用者側だった施設の内側を知ることが出来たのでとてもいい体験でした。別府っぽさをより体感した感じがします。観光客が利用する別府ではなく、アピールする側になって初めて気付けたこともありましたし、自分を見てもらうという媒体が増えたという意味でも貴重な体験でした。

「孫が全然帰ってこない理由がわかった」




別府にいると全てはタイミングってことを痛感しますよね。ひょうたん温泉のプロジェクトも本当にタイミングでしたし。今回の撮影も色々な事情で3回くらいリスケして今日なので(笑)

梨乃:このタイミングでなければ、むし湯で撮影も出来てないですしね。焦らず機を待つと言うことも時には大事だと思います。

ミスアースも大分で代表になって、日本5位になったんでしたよね。大分大会の時はみんなで生配信を見ながら応援して。あれも本当にタイミングでしたよね。

梨乃:みんなで応援してくれているその動画を後でママと一緒に見て(笑)「娘を別府にやってよかった」って言ってくれて。
つい先日も卒業式のタイミングでママが別府に来たんですけど、私が好きになった場所に連れて行ったり、好きな人に会わせた時に「沢山の人に愛されて、私の娘は幸せ者だ。別府最高だね」って言われて。そうやって、自分の努力以外の自分の好きなものを褒められるのはとても嬉しかったです。


サウナのように外気浴も出来る

なんだか泣きそうになりますね。娘を通して感じる別府の良さって、母にとっても嬉しいし、娘にとっても嬉しいし。愛を感じます。

梨乃:おばあちゃんを連れてきた時も「孫が全然帰ってこない理由がわかった」って言ってくれて(笑)紅葉の時期に私が気に入ってる場所とか、別府でこんな生活をしてるよっていうのを4泊ぐらいでおばあちゃんに体験してもらったんですよ。
宿の人に「大丈夫ですか?」って言われるぐらい連れ回したんですよ(笑)「私の大好きな裏道だよ!」「この時間に見たら観光客が少ないから行くよ!」とか、ローカルを駆使して別府ツアーをやったんですよ。おばあちゃんもずっと感激してて「これで心置きなくいける」「いや、まだ死なんでよ」みたいなやりとりしてました(笑)
ご飯も美味しくて、自然も素晴らしくて、地域の人に愛があって、そんな愛がある人達に愛されて、それを大好きなおばあちゃんが言ってくれたことが嬉しかったです。

自分の好きなものを好きな人が同じように好きって言ってくれるのは最高ですよね。僕もたまに友人を別府案内したりしますが、別府を好きになってくれると、自分のことを好きだって言われるくらい嬉しいです。
別府で好きな場所と言えば、今回撮影したむし湯も梨乃ちゃんが好きな場所の一つですよね。

梨乃:中高大が同じで1番仲のいい親友と一緒によく行ってました。

中高大が一緒は凄いですね。

梨乃:AO入試が終わって時間が空いた時に、1人でセブ島に1ヶ月くらい言語留学(遊びも)に行ってたんですよ。高校時代最後のフィーバーだ!みたいな(笑)
そんな時に泣きながらその親友から電話がかかってきて。その子はお堅い家で弁護士になるために難関大学を目指してたんですけど「センター大コケしちゃった」と。私はセブ島にいて最高にテンションが高かったから「大丈夫大丈夫!APUに来て、経営学んで、経営者になればよくない?」って言ったんですよ。その感じが逆に良かったのか、家族ぐるみで仲が良かったので、むこうの親も「山田がいるならいいでしょう」って言ってくれて本当にAPUに来ることになりました。「あんたがあたしを追いかけてきた」って冗談で言ってましたね(笑)
APUは水曜日が休校になってることが多いから、朝から鉄輪に来て、むし湯入って、「縁間」でむし麺とむしピザを2人で食べるっていうのがルーティン化してました。


高台から見下ろす鉄輪温泉

別府でしか体験出来ない最高の休日ですね。しかも親友と。

梨乃:1回休学した時に車を買ったんですけど、そこから別府や大分の開拓度合いが増しましたね。むし湯も回数券を買って月1で行ってました。疲れたなっていう時には必ず行ってましたね。

他によく行ってた温泉はありますか?

梨乃:別府じゃないんですけど、車で移動するようになってからは「まるた屋温泉西方の湯」によく行ってました。西大分かな。茶色系の湯で、ちょっととろみがある泉質で、小さめのサウナがあって、水風呂が温泉冷却水なんですよ。あと、ドライヤーがいいやつで(笑)

ドライヤーは女子的には大事なポイントですよね。

梨乃:綺麗なロングヘアーを目指してたので。コスパが良くて、サウナも入れて、水風呂も温泉水で、温泉の泉質も肌に合っていたのでよく行ってました。車にずっと温泉のセット積んでドライブがてら。お風呂上がりに別大国道を窓開けながら運転するともう最高で。別府の温泉じゃなくて申し訳ないですけど(笑)

リアルに想像できます(笑)もう最高ですね。大丈夫です。もちろん別府以外にもいい温泉はたくさんありますから。

梨乃:あとは「岡本屋」が最高ですね。ミルキーブルーの露天風呂はほんとに素敵です。4時とか夕方ごろに行くとめっちゃ綺麗なんですよ。女将8の撮影の時は特別に貸し切りで。本当にずるいぐらい別府を楽しんでましたね。でも、きっとそれも別府の方達の温かさが合ってこそだったと思います。


鉄輪にある蒸士茶楼にて

ミスアースの時は特に外見も内面も「美しさ」ということに関して意識していたと思うんですが、美的な意味で温泉ってどうですか?例えば、肌のケア的な意味や、デトックスみたいな意味で。

梨乃:まず、大前提としてストレスや疲れを溜め込むのが1番ダメで。汚れ的な意味で言うとクレンジングやシャンプーにお金を使えって言われてるんですよ。全てを落とし過ぎない、綺麗に落ちるものを使う。
温泉や蒸し湯に入るって中から出すものなので、デトックスに近い感じですよね。自分の体内から出せるものって限度があるじゃないですか。無理やり医学的に薬などで出すわけじゃないので。普段の生活の中で溜まるものを出すサイクルを習慣化するってとてもいいことだと思いますし、ストレスで肌が荒れるとかっていうのは、温泉に行くことで結構減ると私は感じています。

ストレスを出す、和らげることが大切な気もしますよね。

梨乃:これは私の勝手な肌感というか、解釈なんですけど、佐賀で働いていた時は施設の温泉には入れたんですけど、別府ほど温泉が身近じゃなかったですし、施設の浴場みたいな感じだったので風情とかはないわけです。
でも、別府で温泉に入ると風情とか湯の質とか、もっと言うと行く道中とか、温泉での会話とか、入った後の時間とか、全部込みでワンクールになる感じなんです。つまり、物理的にスッキリするのと同時に心がスッキリするので、上がった時にこう「さっ」ってなるんですよね。生まれ変わるじゃないですけど。その感覚の方が実は美容的にはすごくいい影響があるんじゃないかなと思っていて。身体も心も同時に整えるみたいな感覚です。

なるほど。それは僕も同意見ですね。きっとそれって現代的な湯治ですよね。温泉に行くその始まりから終わりまでが、全部込みでワンパッケージになっている。汗と一緒にストレスも出ていく。

梨乃:湯治が暮らしの中にあれば、ストレスを感じてもすぐにケアしてあげられる気はしますよね。あとはとにかく値段が安いです。学生に優しいなって思います。でも、観光業を色々知り始めるとその値段で大丈夫?って言いたくなる部分はありますけど、利用者からしたら本当にありがたいなって思いますね。
温泉に入れば必ず綺麗になりますっていうわけじゃなくて、日頃ケアするベースを作るっていう意味で温泉が日常にあるのは美容にとてもいいと思います。
それは心を綺麗にするって意味でも取り入れたい習慣かもしれないです。肌もそうだし、食事もそうだし、代謝もそうだし、全部込みで「美」と言うよりか「健康」に近いんじゃないですかね。
私が目指しているのも健康美だから、健康的にちゃんと内側から輝きたいなら温泉はとてもオススメだと思います。逆に医療的な美を目指すならあまり効果はないかもしれないですね。別府の人たちを見てても目がキラキラしてる人が多いです。濁ってないんですよね、目が。

そうですね。それはやっぱり心が健康である証拠かもしれないですね。喋る時も子供みたいに喋る人多いですよね、別府は。

梨乃:温泉地で育つとそうなるんですかね?若さという意味でも温泉は効果があるのかもしれないですね。

今日はありがとうございます。最後にこれから別府に来る人へメッセージをお願いします。

梨乃:さっきも少し話したんですけど、47都道府県全部行ったんですよ。佐賀と新潟は働きに行ったんで、7ヶ月と5ヶ月それぞれいたんですよ。
旅行にもよく行くんですけど、そこで出会った人や誰かが繋いでくれた人のお誘いは基本断らないんですよ。誘ってくれた人の労力を私がめんどくさいっていう言葉で終わらせてはいけないっていうのがポリシーであるので、どうしても無理じゃない限り行くようにしていて。

めちゃくちゃ大事なことですね。普通に生きてるとなかなか出来ないことでもありますけど。

梨乃:誘われた場所に行ったらまたそこで知り合いが増える。それを「経県値」っていうアプリで管理してたんです。色付けできるんですよ、住んだらピンクで5点、泊まったら赤で4点みたいな色分けがあって。白いところを全部埋めたくなっちゃったんですよね(笑)そこから数珠繋ぎで「じゃあ行くね」が続いて、気が付いたら47都道府県全部に知り合いが出来てました。
そうやって行動的に動くことを客観的に考えた時に「私って野生的だな」とふと思ったんですよね。ちょっとだけ野生的になったらより楽しいんですよ。「今日は車中泊しちゃえ」みたいな感じで(笑)

今回の撮影も温泉まつりのタイミングで福岡から来てもらいましたが、車中泊する気満々でしたよね(笑)

梨乃:割とやります(笑)それで、別府にいるとその野生さみたいな感覚がすごく磨かれる気がするんですね。カオスさに溶け込むために野生が呼び覚まされる感じ。飛び込めるようになる。玄関を開ける時も、人に話しかける時も、何かを楽しもうとする時も、一歩前のめりになれる。
「一休み」ってお店によく1人で行ってたんですけど、横に座ったおっちゃんとかに「今夜飲もうぜ」とか誘われるんです(笑)普通だったら怖いなと思う女子もいると思うんですけど、野性味があると会話が成り立つし、コミュニケーションを億劫に感じないんですよね。野生だから嫌な時はキッパリ断れますし。温泉に入れば、おばちゃん達と会話するし、これだけ海と山が近いから、自然の雄大さを感じることも多い。だから、別府にいると必然的に野生さが磨かれるんですよ。

野生が呼び覚まされる街、別府。いいですね。野性味って人間力って言い換えることも出来るかもしれないですね。

梨乃:九州っていう場所自体が、元々歴史的にも異文化が入る場所じゃないですか。混ざることに対して抵抗がない地域な気がするんですよね。私も答えが出ているわけではないんですけど、原始みたいなちょっと土臭い野生味が受け継がれている感じがありますね。
別府は特にそれを強く感じますし、別府に行くって決めた人は、もう呼ばれてるんですよ(笑)自分の意志で決めたようでそうじゃない。「お前には野生味がそろそろ必要だ」っていう時に呼ばれる土地なんですよ。じゃないとこんなにパワーが強い場所にポンと来ないと思うんですよね。
客観的に引いて見ちゃうと、ただの観光地で別府って入りづらいと思うんですよ。楽しもうって自分の野生の部分を解放してあげたら、この混沌さや土臭さが面白くなって、ワクワク出来ると思います。
大切なのは距離を取りすぎないこと。いつもよりちょっと前のめりぐらいで歩くと、別府はとっても楽しいです。


ひょうたん温泉の動画撮影と同じ場所で



MODEL PROFILE

名前:山田梨乃(Rino Yamada)
年齢:23歳
出身:千葉
職業:経営コンサル


CREDIT

タイトル:野生を呼び覚ませ
撮影日:2024年4月6日
写真撮影&インタビュー:東京神父

撮撮影協力:鉄輪むし湯、Hiromiya Toji Stay、鉄輪ヤング会、かんなわ六画ストア、カフェ&ギャラリーアルテノイエ、蒸士茶楼、うすき屋、ルカ、美保さん、ルツさん、智恵美さん、別府市、別府市温泉課



※温泉や個人の情報は全て撮影当時のものです。

ONSEN INFO

鉄輪むし湯

鉄輪温泉にある歴史的な市営公衆蒸気浴場。1276年に浄土教の一門である時宗の開祖である一遍上人が創設したと伝わる。むし湯は石室の中にあり、1m四方の小さな木戸を開けて入ると、約8畳ほどの空間が広がっている。石菖(せきしょう)という薬草の上に横たわり、蒸気で蒸されるという蒸気風呂。温度は約75℃でスチームサウナと同じくデトックスやリラックスの効果があり、もちろん温泉も完備されている。外気浴が出来るスペースもあるため、水風呂がないことだけが惜しまれる。



住所:大分県別府市鉄輪上1組


営業時間:6:30〜19:30(最終受付19:00)
(定休日:第4木曜、祝日の場合は翌日)


入浴料金:700円 貸浴衣220円


泉質:塩化物泉(浴槽)
単純泉(むし湯、足蒸し)


地図:湯巡りマップ


公式HP:別府八湯温泉道サイト



BEPPU ONSEN ROUTE 88