BEPPU ONSEN ROUTE 88

No.56

畑山知美

湯山の里温泉 自然と一体になれる温泉

WANDER COMPASS BEPPUでコンシェルジュとして働くともみちゃんは愛称timo(ティモ)として別府で愛される温泉大好きなベッパー。今回は朝・昼・夜で違う顔を見せる別府の街をtimoちゃんチョイスで紹介してもらいました。
朝は自分時間を大事に。昼はガイドとして別府愛溢れるおもてなし。夜は大好きな人への愛が溢れるデート。timoちゃんと別府の街が魅せるギャップにご注目ください。


Writer & Photographer : 東京神父

撮影日はあいにくの雨でしたが、雨でも楽しめるのが別府の魅力。
この雨が50年後、温泉になります。

朝日を見るのが趣味だというtimoちゃん。実際に別府に来た人をアテンドする時の1日に密着しました。果たしてどんなツアーになるのか?ツアー行程とtimoちゃんのインタビューを同時進行でお楽しみください。

※以下、太字のツアー部分は Written by timo






am5:15
別府駅に集合。海まで歩いて日課の朝日を見に。

am5:38
日の出。なんと、この日はハンバーガーの形。その日その時しか見れない自然の景色を楽しむ。

よくこの場所から朝日を見る

まずは簡単な生い立ちと別府に来たきっかけを教えてください。

timo:最初に別府へ来たのは大学進学の時です。APU(立命館アジア太平洋大学)に一目惚れして入学を決めました。それが初めての九州、初めての大分でした。
私は関西出身で、生まれは京都。少しだけ大阪にも住んで、実家は神戸です。幼稚園から高校までは神戸で育ちました。だから、別府は人生で初めての「西の果て」で。初めて別府に降り立った時、最初に思ったのは「道路にヤシの木が生えている!」でした。南国みたいで、本当に驚きました。沖縄にも、そもそも九州にも来たことがなかったので、そんな風景を見るのは初めてだったんです。高校生の頃は「大分ってどこ?」って地図で探してもわからないくらいでした。


APU卒業後はどんな道を進みました?

timo:卒業して東京へ出ました。そこで4〜5年働いた後、鎌倉に本社のある会社へ転職し、鎌倉に移りました。そして2017年、その会社の転勤で別府にまた戻ってきました。

am6:16
ラジオ体操。海外向けにライブ配信をしながら、カラダを動かす。

am6:35
裸足で海へ。数分でもとても気持ちがいいので、ぜひ皆さんも試してみて。

スパビーチで朝のライブ配信

今のワンダーコンパス(現在timoちゃんが働いている別府の観光案内所)との関係は、その頃から?

timo:いえ、当時はまだワンダーコンパスは存在していませんでした。前の会社はベンチャー企業で、新しいサービスを立ち上げていて、そのサービスを広めるために別府に赴任したんです。別府支店のような立ち位置でしたね。勤務は約1年半。その後、渋谷で「ワンダーコンパス渋谷」がオープンするタイミングで東京に戻りました。渋谷で働いて半年後に、今度は「ワンダーコンパス別府」がオープンして、そのタイミングでまた別府に戻ってきました。2019年4月5日で温泉まつりの真っ最中でしたね。


朝日の次の目的は温泉と朝食

全国に約1500か所以上ある外国人向けの観光案内所の中から、おもてなしの心が「日本一」との評価を受け、日本政府観光局に表彰されたり、今や別府の“顔”のような存在になりましたが、立ち上げ当初はどんな経緯が?

timo:実は、鎌倉で働いていた会社がワンダーコンパスの立ち上げに関わっていて。別府の企業、東京のブランドオーナー、そして私がいたベンチャー企業。この3社の合同で始まったプロジェクトでした。別府を拠点に、東京のブランドと連携しながら運営を進める形で私たちは現場を担当しました。コロナの時期に一度抜けたけれど、立ち上げからずっと携わっています。

am8:00
海から旅館へ。徒歩5分の山田別荘へ。

まずは朝風呂に

別府に呼ばれてる気がしますよね。その後は別府の会社に完全に移ったんですか?

timo:はい。私が転職をしたいと思ったタイミングで、鎌倉の会社も別府を撤退しました。ありがたいことに当時の社長さんが「これまでの仕事を、そのまま別府で続けていい」と言ってくださって。そのまま、今のチームに引き継ぐ形で残りました。

am8:30
朝温泉♨︎ 美人の湯とも言われている、湯上がりさっぱり「炭酸水素塩泉」

特別に許可をいただいて撮影しています

なるほど。なぜ別府に移住する決心を?

timo:2021年のコロナ禍で仕事がすべてオンラインになったんです。それをきっかけに家を手放して「アドレスホッパー」として1年間、全国を旅しました。その間、いろんな土地を巡ったけれど、やっぱり別府が一番心地よかったんですよね。

先ほど、神父さんが「別府に呼ばれている」と言いましたが、本当にそう思います。一番の理由は人の温かさ。別府の人たちは、本当にウェルカムなんです。昔の私なら、ひとつの場所に腰を据えるなんて考えられなかったですが、そんな私が「ここに根を下ろしたい」と思えたのは、周りの人たちのおかげです。「小さなことは気にしなくていいよ」「なんとでもなるよ」と地元の方達が言ってくれたことで、移住へのハードルが下がりました。それが背中を押してくれた一言でしたね。


「山田別荘」女将のるみさん

別府の魅力を一言で言うなら?

timo:やっぱり「人」ですね。人、自然、温泉。この三つが揃っているのが別府の強さだと思います。そして何より、その人の「受け入れる力」だと思います。変わった人、面白い人、少しクレイジーな人。そういう人を排除せず、むしろ面白がる文化がある。だからこそ、また新しい人が集まってくる。

神父さんもよくおっしゃってますが、別府は「HENTAI CITY」で、海外の方からすると「変態」って日本語はあまりいい意味で捉えられていませんが、別府ではそれも褒め言葉です。私自身、観光案内所で働くようになって「人を受け入れることの喜び」を初めて知りました。誰かを迎えることで、自分の世界も広がっていくんです。

am8:45
山田別荘さんで朝ごはん。(要予約)別府で朝早くご飯を食べるなら「雲の峰 (7:00〜) 」「Tsumugu Coffee Stand (7:30〜) 」「 YOUMECA (8:00〜)」等もおすすめですが、温泉にも入れるのは山田別荘さんだけ!

とても美味しい「山田別荘」の朝ごはん

変態っていう言葉の意味は「人と違うことを否定しない」ってことだと僕は思ってます。そういう意味では別府は変態だらけですよね(笑)timoちゃんは別府の温泉文化にも深く関わっていますよね。

timo:はい。インスタで発信したり、プライベートで温泉に入りにいったり、別府に住んでいると温泉文化とは嫌でも関わりますよね。地元の人が通う“地元湯(いわゆるジモセン)”は、別府の象徴です。大学時代から色んなジモセンに通っていました。

ある日、すごく暑い日に温泉に入っていたら、おばあちゃんが声をかけてくれて「梅ジュースあるよ、飲む?」って言ってくれたんです。そこで手渡しされるのかと思ったら、そのまま家に連れて行かれて(笑)そんな出逢いが日常にあふれているのが別府なんですよね。温泉に入りに行くことは、ただお湯に浸かることじゃなく、人と関わること、つまり「コミュニケーション」なんです。地元の人に「どこから来たの?」と話しかけられて「東京からです」「APUの学生です」って会話が自然に生まれる。観光地の温泉でもなかなか起こらない、別府ならではの光景です。

女湯にはステンドグラス

昔は「ジモ専」って言葉の通り、地元専門で地元の人しか利用できないって意味でしたが、今では「ジモ泉」は地元の温泉という意味になっていたりします。(本来は地元専門で「専」という漢字を使っていたが、今は地元の温泉という意味で「泉」という漢字が使われることもある)でも、やっぱりその文化を守ってきている方達へのリスペクトは必要ですよね。

timo:本当にそうだと思います。別府に住んではいますが、そういう「使わせていただいてる」っていう感謝の気持ちが何より大事だと思います。

am10:45
WANDER COMAPSS BEPPU集合&出発。湯山へ向かうよー!

ワンダーコンパスで集合!ツアースタート

今回は湯山の里温泉で撮影しました。timoちゃんからのリクエストでしたが、なぜこの温泉を選んだんですか?

timo:オープンする前からご縁があって、作っていく過程をずっと見てきた場所なんです。オーナーの恒松さんが目を輝かせながら、温泉を作っていく姿に心を打たれました。何度訪れても変化があるし、毎回進化しているんです。

恒松さんがおっしゃっていた「周りの定年退職した知り合いたちが、病気の話ばかりしてつまらない。どうせなら夢や挑戦の話をしたい」という言葉が印象的で。その挑戦の形として始めた場所でもあるんです。その姿勢がすごく好きで、応援したいと思いました。

am11:15
食材調達。チョコレート以外は!?何でも蒸せる地獄蒸し(温泉の蒸気で蒸す料理)この日は、玉ねぎ・レタス・豚肉・カボチャ・鶏手羽・パプリカ・ブロッコリー・ウィンナー・ハンペン・きのこ・コーンなど!それぞれ好きな食材を選んだよ。皆さんは何を蒸したい?

温泉に行く前に、マルショクで買い出し

挑戦することに年齢制限はないからね。僕も何度か温泉に入りに来てますが、これだけ自然と共存してる温泉も珍しいですよね。

timo:自然を大切にして、ちゃんと共存している温泉です。そして若い人たちがそこに関わり、世代を超えて一緒に場を作っている。その光景は、もちろんずっと見てきたからではありますが、本当に美しいです。

timoちゃんが言う「人、自然、温泉」が別府の魅力だというのがよく分かります。

timo:温泉を維持するって、ものすごく大変なんです。毎日入る人がいるということは、毎日欠かさず手入れ、お掃除している人たちがいる。その努力の上に、私たちは安くて豊かな温泉文化を享受している。別府にいると、それが当たり前に感じてしまいますが、実はとても贅沢で、ありがたいことなんですよね。

am11:35
湯のまち、別府。天候によって変わる湯けむりビュー。この日は山の麓の雲が龍のように登っていく瞬間を皆んなで目撃。かっこよかった。

ゆけむり展望台で記念撮影

別府の日常は実は非日常で、奇跡みたいな時間なんですよね。でも、実は日常って奇跡の連続なんだってことを別府にいると思い出しますよね。

timo:そうなんです。だからこそ、私はガイドとして「非日常としての別府」を訪れる人たちに、その尊さを伝えたい。旅の中で「当たり前じゃないもの」に気付いてもらえると嬉しいです。そして、それは観光客の方達だけじゃなく、別府に住んでいる方達にももっと知って欲しいと思います。

am11:50
湯山に到着。私の大好きな別府の温泉。手作り看板の前で、温泉前に恒松さん含めみんなで集合写真。

湯山の里温泉の撮影に協力してくださった皆さん
左から:東美菜子さん、羽田野真耶さん、梶原悠暉さん、伴洸次郎さん、
ヴァネッサさん、ラビさん、ドリアンさん、ゴトウさん、
藥師寺祥さん、恒松孝子さん、恒松栖さん、timoちゃん

湯山の里温泉もそうですが、別府の人ほど温泉に入ってない気がしますよね。あまりに当たり前に温泉に入れてしまうから。

timo:こんな温泉があったんだ!って驚かれる方も多いです。湯山の里温泉は別府でも特別な温泉なので、ぜひ入りにきて欲しいです。







BEPPU ONSEN ROUTE 88