BEPPU ONSEN ROUTE 88

No.56

畑山知美

湯山の里温泉 自然と一体になれる温泉

WANDER COMPASS BEPPUでコンシェルジュとして働くともみちゃんは愛称timo(ティモ)として別府で愛される温泉大好きなベッパー。今回は朝・昼・夜で違う顔を見せる別府の街をtimoちゃんチョイスで紹介してもらいました。
朝は自分時間を大事に。昼はガイドとして別府愛溢れるおもてなし。夜は大好きな人への愛が溢れるデート。timoちゃんと別府の街が魅せるギャップにご注目ください。


Writer & Photographer : 東京神父

am12:00
いざ、温泉へ!わくわく、竹の中へ。連れてきた皆んな、思わず息を呑む素敵な竹林。とても丁寧に整備されているこの道。6月は紫陽花で彩られます。

この竹林の奥に温泉がある

そもそも、ガイドを始めたきっかけは何だったんですか?

timo:カナダにワーキングホリデーで行った時、現地で仲良くなった友人のカナダ人カップルが日本に遊びに来たんです。そのとき、彼らを案内したのが私の「初めてのガイド体験」でした。ずっと海外ばかり見ていた自分が「日本ってこんなにいい国だったんだ」と改めて感じました。

案内しているうちに、彼らが感動するポイントが自分の感覚とは全然違うことに気付いたんです。ここに感動するんだ、この景色をきれいだと思うんだ、そんな発見がとても新鮮で「こういう視点こそ大切にしたい」と思いました。その経験をきっかけに「もっといろんな人を案内してみたい」と思い、鎌倉のベンチャー会社に初めて転職しました。回数はそんなに多くないですが、なんだかんだで、もうすぐ10年になります。

am12:15
温泉を堪能!自然の中での温泉は最高。泥湯・源泉の湯・せせらぎの湯など8種類の温泉も楽しめちゃう。お話ししたり、自然の音に耳を傾けたり、自分たちのペースで、リラックス。

ポスターを作るならこんな感じ?
恒松夫妻

写真家にも写真家の視点があるように、ガイドだからこその視点っていうのがあるんですね。

timo:自分にとっての日常や当たり前が、誰かにとっては感動の種になる。それを目の前で見る瞬間が本当に好きなんです。私は新しいこと、人との出会い、刺激が大好きで、そういう気持ちが自然とガイドにも出ているんだと思います。出逢いはすべて一期一会。だからこそ、毎回が特別です。

今回の撮影でもそうでしたし、別府はその化学反応がより強く起きる土地だと思います。前日にたまたま別府に来た人を誘ったり、その場で出会った人と一緒に過ごしたり、そういう偶然が積み重なって「旅」そのものが生まれていく。それが私にとってのガイドの醍醐味です。そういう意味で言うと、普通に暮らす毎日も私にとっては「旅」そのものなのかもしれません。

人と自然と温泉が共存できる世界

timoちゃんが普段からライブ配信しているのも、毎日を「旅」している気持ちで配信しているから、ファンがつくのかもしれないですね。

timo:そうだと嬉しいですね。別府の日常を日々配信してるのでぜひチェックしてみてください。
TimoInBeppu(youtubeチャンネル)
撮影当日の朝のライブ配信の様子

am12:30
滝行。湯山の里温泉には、8mの滝もあります。あったまったカラダに最高のリフレッシュ!

滝行するInstant SaunaスタッフのGotoYusukeさん
天然の泥湯
奥左から時計回りにラビ、ドリアン、祥、ヴァネッサ、timo

今回の撮影でも、不思議なご縁がたくさんありましたよね。

timo:例えば、今回ドリアンというゲスト(観光客)がいました。撮影にも参加してくれたんですが、彼と会ったのも撮影の前日だったんです。ラビなんてその日たまたま湯山の里に温泉に入りに来ていた観光客ですしね(笑)ラビとドリアンが同じフランス人だということもあって、二人が仲良くなったり。別府にいると本当に「旅」をしている人も、そうじゃない人も一緒に冒険に出かけることが出来るんです。

ドリアンは私のノートに「この日を絶対に忘れない」と書いてくれたんです。本当に素敵な人でした。最初は一泊だけの予定が、二泊、三泊と延長してくれて「今日はもう一泊していくよ」って言ってくれて、彼が別府に魅力を感じてくれたのがすごく嬉しかったですね。

ガイドを通じて出会った人の国を訪ねて再会したり、日本にまた来て別府以外の場所で再会したり。そんな繋がりができるのは、この仕事ならではですね。

am12:45
むし湯。前からサウナが作りたいと言っていた恒松さん。いつの間にかお手製の天然蒸し湯ができていました。滝の前後にぜひ。

手作りのむし湯も完備
温泉でととのう

ガイドをやってきた中で、何か印象に残っている出逢いなどありますか?

timo:忘れられないゲストの1組に、アメリカから来たカップルがいます。雨の日に地獄めぐりを一緒に周ったんです。その後、彼らは帰国してから、自分たちの撮った写真をフォトブックにして送ってくれました。その中で印象的だったのが、「海地獄」の有名な青い池よりも、庭園の写真が圧倒的に多かったこと。

「この景色が一番好きだった」と。そこは海地獄の中でも、緑と山と池が重なって見える場所で、千壽さん(海地獄の社長)も大好きだと言っていた景色なんです。その時、初めて気づいたんです。日本人にとっては“青い湯”が象徴的だけど、海外の方は「静けさのある庭園」に美を感じるんだ、と。それ以来、私もその場所が大好きになりました。

pm1:30
テントサウナ。自然の温泉の後でさらにととのっちゃう!?「Instant sauna」として営業中。詳細はこちらから。

温泉の後はサウナも楽しめる
Instant Sauna恒例の水浴び儀式
ヴァネッサは水が冷たすぎるらしく、自分でかけていた(笑)

僕もそういう「物語を受け継ぐ風景」って別府に沢山ある気がします。それを大切にしたいし、そういう「情緒」を感じられる街ですよね、別府は。

timo:そうなんですよ!その庭園を守ってきたのは、千壽さんのおばあちゃんなんです。「山を絶対に売ってはいけない」「景観を保ちなさい」と、ずっと言い続けてきたそうなんです。山があるからこそ、雨水が溜まり、温泉も生きる。そういう「見えない背景」があるんですよね。別府には、そんな情緒や物語が自然に息づいているんですよ。私はガイドとして、その「小さな物語」を少しずつ添えていきたいんです。歴史や文化、暮らしの断片。それらを知ることで、景色の見え方がまったく変わるから。

pm2:15
地獄蒸し。温泉の後に、合わせて準備。ただの蒸し料理ではないんです。温泉の蒸気で蒸すからミネラル豊富。体の内側からも健康に。自然に感謝。

サウナの後ももちろん温泉に入れます
マルショクで買い出した食材を地獄蒸しでいただきます

写真もそうですよね。キャプションやその写真の背景がわかるだけで、全然見え方が変わったりする。歴史的な写真なんかも、その背景が分かるかどうかで価値が変わってきたりしますしね。

timo:たとえば美術館で音声ガイドを聞くと、同じ絵でもまったく違う印象になるじゃないですか?旅も同じだと思うんですよ。ガイドを通して「背景の物語」を知れば、その街の見え方がぐっと深まるんです。だから、そういう言葉や物語を沢山持っていたいなと思います。

pm4:00
湯の花小屋見学。江戸時代(300年前)から続いている伝統的な技術で作られているのは、ここ明礬だけ。紡がれている知恵、職人さんの技術、自然の奇跡が生み出した、国の重要無形民俗文化財。

湯の花について説明(みょうばん湯の里)

pm5:00
鉄輪温泉へ。大好きな湯けむりに囲まれて幸せ。雨の日は湯けむりがもっくもく。人の笑顔も思わず生まれる。外国人から見たらおとぎ話の世界みたい。

湯けむりが道から立ち登る筋湯通り
ひろみやさんの前で
特別にちょっとのお昼寝タイム

同じ景色は二度とないですからね。同じ場所でも100人いれば、100通りの感じ方があるわけで。

timo:本当にそうです。同じ道を歩いても、興味を持つ場所も、会話の流れも毎回違う。だから私も毎回同じ話をするわけじゃなくて、その人の反応や関心に合わせて自然に話が変わっていくんです。別府は新旧が混ざり合う街。歩いていると、古い家の隣に新しい家が建っていたりする。ある日、私が「この家、ちょっと古いですね」と言ったら、ゲストに「なんでわかるの?」と聞かれて。「屋根が瓦だからですよ」と答えたら、すごく驚かれたんです。

私にとっては当たり前でも、それを知らない人にとっては新鮮な学びになる。そんな瞬間が好きですね。小さなことでも共有することで、お互いの世界が少し広がる感じがするんです。

別府では有名な「ハウルの動かない城」
温泉の硫黄で朽ちた地獄の説明
「ひろみや」女将のみほさんと

常識に囚われていると、視野が狭くなりますよね。「新しい挑戦」が人生にないと想像力も失われていくし。だから「旅」することが大事ですよね。物理的にも、精神的な意味でも。

timo:本当にそうです。例えば、神社とお寺の違いなんて日本人でも曖昧にしか知らない人が多いですよね。海外の方に質問されて、改めて調べて学ぶこともあります。自分の常識がすべての常識じゃないんだと、気付かされる度にガイドが楽しくなるんです。

am5:30
湯雨竹。温泉が竹の枝をつたい、空気に触れる。100℃近くある熱い温泉を冷やす画期的な装置。竹は夏は三層、冬は一層。ひょうたん温泉で、加水しない100%の温泉を楽しめます。

湯雨竹について説明(ひょうたん温泉)
湯上がりに食べたい「アルテノイエ」のシフォンケーキ




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