BEPPU ONSEN ROUTE 88

No.19

土井あづみ

此花温泉 光町大火で焼失も再興した温泉

土井あづみちゃんは別府の大学生。今回の撮影は彼女に密着し、別府の大学生の1日をお届けするというもの。モットーは「一日百笑」という彼女の笑顔溢れる暮らしは、人と繋がる別府ならではのとても濃いものでした。


Writer & Photographer : 東京神父

pm12:00 念願の「クーポノス」

気さくな従業員の皆さんと

ここからはあづみ目線でお届けします!

お昼ご飯は別府を散策している時に見つけた「クーポノス」さんへ。いつも満席だったり営業時間外だったりと、振られ続けていたので何度目かのリベンジです。ベトナムのスパイスはなんだか素朴な感じがしてとても好き。口の中で広がる香りと旨味に酔いしれました。


食べることが大好きだというあづみちゃん

今年の一月にベトナムへ行って以来、ベトナムの虜になった私。ベトナムのおおらかで自由に自分らしく生きている民族性が素敵で、どこか別府の人たちと似ている気がしてならなかったです。


「やばーい。美味しそう!」

ベトナムに行った時に印象的だったのは、滞在していたホテルの警備員さんが仕事中に制服のまま隣のカフェでコーヒーを飲んでいたこと。彼に「今勤務時間中?」と聞くと、「そうだけど、ちょっとコーヒータイム」と言われました。

「仕事中なのに大丈夫?」と聞くと「どういうこと?」と言われて、楽しく生きてるなーと。でも、息を抜きながら自由に働くからこそ、他人にも寛容になれるのかもしれないなと思いました。ベトナムほどではありませんが、そういう「肩の力を抜いて生きる」ことが出来るのも別府の良さの一つだと思います。



pm12:45 電卓使いの大さん

不思議の国の別府

「クーポノス」でお腹も心も満たされた後はブラリ別府散策。裏道や路地を歩いていると、なんだか異国に来たような感覚になります。 私はその瞬間がとても好き。きっと新たな出会いや発見をすると私の脳内はドーパミンで溢れるのだと思います。

そんな時、ふと見たことのある顔がこちらに近づいてきました。大さんです。大さんは私のバイト先にお酒を卸してくれている方でいつも私を見かけると大きな声で「お!あづちゃーん!今日も可愛いね」と声をかけてくれる元気いっぱいな人なのです。


ノリが似ている二人

私はそんな大さんが支払いの時にとても小さい電卓を使って計算する姿にいつも見入ってしまいます。米粒サイズのボタンを間違えることなく器用に押して使いこなしている。ミニマム電卓使いのプロ。そんな大さんと撮影中に偶然会えるなんて、やっぱり別府には人と人とを繋ぎ合わせる縁の力があるんだなーとしみじみ。



pm13:00 会いたい人に会える幸せ

別府には地域猫や野良猫が沢山いる

別府では誰しもが人に話しかけることを躊躇させない魔法にかかります。あなたが大阪人だからでしょ?というツッコミはさておき、その理由の一つが温泉文化だと思います。文字通り裸の付き合いが街中で行われているのです。私の出身地である大阪でも「しゃべくり」という言葉があるようにみんなよく喋りますが、別府での「しゃべくり」は一味違います。


「あ、ここにも猫ちゃん」

初対面の人でも距離を一切感じないし、みんな自分のことを包み隠さず話してくれます。そのことを強く感じたエピソードが一つあります。ある日、APUからの帰りのバスで92歳のお婆ちゃんと出逢いました。とても元気で笑顔の素敵なお婆ちゃんでした。

約30分の乗車時間中、お婆ちゃんは戦前〜戦後までの波乱万丈な自身の人生について話してくれました。初対面にも関わらず、たくさんのアドバイスを頂きました。お婆ちゃんに言われた「今の人はいいよ。本当にいいよ。想い人がいてもいつでも会えるんだから。しかも電話だってすぐできる。私の時なんて想い合っていても2、3ヶ月で戦争に行ってしまったからね」という言葉に涙を堪えるのに必死でした。


「日常」の大切さを教えてくれる街

努力することの大切さ、人との繋がりの大切さを再認識させてくれたお婆ちゃんにまた会いたいと素直に思いました。いつかまた会えた時には今度は私の人生を話そうと思っています。そんな素敵な出会いや「しゃべくり」が至る所に溢れている街が別府という街なんです。



pm13:30 縁担ぎの「ゑり章」

東京神父もお世話になっている神麻さんと

ゑり章」は私の家から歩いてすぐの場所にある着物カフェ。ここの手作りジェラートは絶品で、私のオススメはラムレーズン。私はいつもバイトへ向かう時、「ゑり章」の前を必ず通ります。「ゑり章」はガラス張りになっているので中の様子が外から見えるようになっていて、高確率でソファー席にこの企画にも登場している温泉名人のさっしーさんが座っています。

いつも笑顔で神麻さんや他のお客さんと話をしているさっしーさんに手を振りますが、気付いてもらえる確率は30%ぐらい(笑)だから逆に気付いてもらえた日はラッキデーと勝手に決めて、何かいいことが起きる日だと縁起を担いでいます。

この日は撮影の休憩で寄ったのですが、常連のおば様が実は今私が住んでいる部屋の内覧に行ったことがあるという偶然も。「地下室で息子が変なもの栽培したら困るから」という本気か冗談か分からない理由で借りなかったそうです(笑)



pm14:30 酒地獄「the HELL」

APUの先輩でもある謙蔵さんに挨拶

the HELL」は最近オープンしたレコードとサワーのお店です。私の父がレコード好きだったこともあり、レコードを見るとなぜかテンションが上がります。お酒を飲むことも音楽を聴くことも大好きな私にとってここはHELLではなくHEAVEN。

オーナーの謙蔵さんとはいつのまにか知り合いになっていて(ユキハシさんと一緒のパターン)どこで出逢ったかも覚えていません(笑)でも、別府の人との出逢い方にはこういうパターンが多い気がします。「一回会えば大体友達」これが別府スタイルです(笑)

謙蔵さんは洋楽から和モノまで幅広くレコードを集めているそうで、お洒落な音楽と美味しいお酒を楽しみたい時は「the HELL」がオススメです!



pm15:10 別府の宝「ブルーバード劇場」

2019年に88歳になる館長の照さんと

別府ブルーバード劇場」は別府の宝だ、と色んな所で耳にしましたが本当にそうだと思います。映画好きの私が初めてブルーバードを訪れた時に感じたのは「タイムスリップしたような感覚」でした。真っ赤でフカフカな椅子とこじんまりとした少し小さめな劇場の空気感は、経験したこともないのになぜか「昔」を感じさせてくれました。もちろんチケットは手売りスタイル。88歳の照さんが今も現役で受付しています。


ブルーバードでの一番の思い出はエリック・クラプトンの伝記映画を観に行った時のことです。最終日だったせいかお客さんは私を含め20代のお兄さんと老夫婦の四人だけでした。上映中に彼の音楽が流れると、みんな好きなようにリズムに乗って頭や腕を動かしていました。心から映画を楽しんでいる雰囲気があって、上映後は静かな映画館の中に四人の大きな拍手が鳴り響きました。

私が中学生ぐらいまでは映画の上映終了後は必ずどこからともなく拍手が起こっていたことを思い出しました。大きなシネコンだと上映終了後みんなそそくさと退場してしまいます。鑑賞スタイルも時代と共に変わってきたのでしょうが、古き良きスタイルや人間味を忘れないように、この日いつもよりも強く拍手を送ったことを覚えています。

映画館やレストラン、カフェやバー、そんな街にある普通の場所で人間にとって普通のこと、つまり私達が忘れがちな大切なものを、別府では日々教えられている気がします。
ここまで読んで下さった皆さん、ありがとうございます。まだまだ別府の一日は長いです(笑)夜の部は神父さんにバトンタッチします。




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