BEPPU ONSEN ROUTE 88

No.53

工藤宏太

新光泉 古くから愛される地元の公衆浴場

この日は別府八湯温泉道名人会の皆さんと一緒に新光泉のお掃除のお手伝いに。何を隠そう僕も(写真家 東京神父)実は名人会に入っております。掃除の管理をする名人会の工藤さんのお誘いで、ルートハチハチでもモデルになってくれたルカと一緒に地元の温泉を掃除してきました。実際に掃除をしている立場から見た別府温泉の現状とは?


Writer & Photographer : 東京神父

掃除を取り仕切る工藤さん

まずは別府との関わりを教えてください。

工藤:行橋市の出身なので、子供の頃から別府には馴染みがありました。杉乃井ホテルのジャングル風呂は子供心に愉しい強烈な思い出となって残っています。また、大人になっても色々な団体や集まりでよく来ていましたね〜。福岡県東部の京築地方の人間にとってはかなり身近な観光地として認知されてますし、とても身近に感じてます。

今日はどんな経緯で温泉の掃除をすることになったんでしょうか?

工藤:10年くらい前から掃除のお手伝いはやっていたのですが、コロナなどの影響でなくなっていました。3年ほど前から、NPO法人別府八湯温泉道名人会でその掃除を復活させた感じです。

我々が名人になれたのは、別府の地元の方々が普段の生活の一部として大切にしているジモ泉(地元の温泉)を温泉道の為にお貸し頂いてるおかげなので、少しでも恩返ししたいし、協力したいと言う理事や会員さんの熱い思いに応えて復活しました。その活動を地元の方々から認められて、ぜひお掃除に来て欲しいと新光泉の町内の方より、ご要望頂き今回実現しました。


全員が温泉好き

名人会は他にも温泉の掃除などやってると思うのですが、その他の活動も含め教えていただけたら。

工藤:名人会では、お掃除プロジェクトのほか、美人温泉道、親子温泉道、そして漢温泉道と活動しております。この3つは読んで字の如くで、美人は女性限定の活動ですし、親子温泉道は、親子で湯めぐりをする方などをサポートしたり、子供さんに入浴マナーを教えたりしています。最後に漢温泉道ですが、要は美人、親子からあぶれた、温泉大好きなおっさん達の集まりです(笑)


工藤:それ以外にも、新しい試みとして温泉に関するインスタライブや湯〜チューブをホームページで公開したり、別府市や大分県の補助金などを活用して若年層の温泉離れや温泉道の普及活動の一助になるような活動を多々手掛けております。

近年では、秘湯探検家の渡辺裕美さんや銭湯評論家の松本康治さんを招いての講演会など様々な活動をしています。今年は、別府市制100周年の記念事業の一つとして、温泉カードOYUKAを発行したり、名人会のNPO設立10周年の記念事業として別府のアイドルべっぴょんの名人化計画を実行中です。


世代を超えて掃除に精を出す

ジモ泉の入浴者が増えてくれたら良いなぁって思ってますね。




名人会が別府の温泉に与える影響は大きいと思うのですが、工藤さんが思う別府温泉の魅力を教えてください。

工藤:これは皆さん口を揃えて仰ってますが、別府は懐が深くて温泉も人もとにかく暖かい、いや熱すぎると言った方が良いかもしれないですね(笑)

今年は名人会も10周年ということで、令和6年10月26日土曜に10周年事業を開催させて頂きました。名人会会員と共に行政関係者や地域の方まで100名を超える方々がお祝いに来て頂き、とても有意義な会になりました。我々名人会が日頃お世話になっている別府の皆様に名人会として感謝とお礼、そしてこれからもどうぞよろしくお願いします、という言う気持ちから開催させて頂きました。とにかく、名人会の仲間はみんな別府が大好きなんです。


新光泉の町内の方々

実際に温泉の掃除をする中で、思うことや課題などがあれば教えてください。

工藤:ジモ泉のお掃除は、ここ2、3年は特に力を入れてます。というのも、温泉道に新規で参入される施設よりも辞めたりする施設が多かったことから、名人会でも何か出来ることはないかということがきっかけでした。
我々名人会は、温泉道に参加している地元の方の普段使いのお風呂にお邪魔させて頂いてるので、少しでも感謝の気持ちを表せたら良いなぁってのが1番です。


工藤:別府の皆さんはご存知の通り、ジモ泉の課題や問題は掃除の手が足りない、利用者が減っている、管理者の高齢化などになります。我々が年に一回でも大掃除して、ジモ泉を管理されてる方の負担がほんの少しでも軽く出来ればと思ってやらせて頂いてます。
その様子をSNSやホームページなどで紹介することでジモ泉に興味を持ってくれる方が増えたり、ジモ泉の入浴者が増えてくれたら良いなぁって思ってますね。神父さんがこうやって記事にして取り上げてくれるのもありがたいことです。


温泉は掃除やメンテナンスが必須

こっちも負けられんなぁって思いますよ(笑)




今回ルカが掃除を手伝ってくれましたが、若い世代にも温泉に関わってほしいと思いますか?

工藤:もちろんですね〜。
ジモ専も名人会も共通してますが、やはり年齢層が高いので若い方にもっと世界一の泉都別府の大切な財産の守り手として色々と関わって頂けるとありがたいなぁって思います。 やはり、若い方が1人いるだけで活気が違いますし、こっちも負けられんなぁって思いますよ(笑)


工藤さんは別府の温泉にはたくさん行かれてると思いますが、よく行く温泉やおすすめの温泉を教えてください。

工藤:上人ヶ浜の別府海浜砂湯が1番好きでした。今は残念ながら入れませんが(2024年10月時点で改装中)
よく行くのは鉄輪温泉のむし湯ですね〜。お気に入りはの温泉は温泉道から抜けてしまったのですが、小倉薬師の湯と幸温泉。あとは宿泊限定ですが、ちとせ旅館の温泉がお気に入りです。


工藤:小倉薬師はお風呂のタイルと湯船が好きで泉質もほんのり硫黄臭がして大好きでしたね。幸温泉は湯船の真ん中からお湯が入ってくるので、どこから入ってもお湯の温度が一定でとても気持ちが良いですね。ちとせはお酒が抜けるのが早い(笑)深酒した日の朝に入るとあっという間にお酒が抜けてシャキッとしますよ。

別府に来るならここは行っとけ!ってお店や場所があれば教えてください。

工藤:先ほどもお答えしましたが、鉄輪温泉のむし湯は絶対ですね。最近のお気に入りは駅周辺でいうと、とらやのちゃんぽんととり天、イタリア厨房シシリア、そば基、大谷うなぎ、鮨乃屋などです。
少し離れて、定食の大黒屋、ホルモン力(りき)、炭焼き工房、レストランマーチ、地鶏ヒデちゃんあたりかなぁ。飲み屋まで入れるとありすぎて大変なのでこの辺で(笑)



別府での面白いエピソードなどあれば教えてください。

工藤:やっぱり名人会に入ったお陰で、同じ趣味を持つ日本全国、いや世界の老若男女と縁が繋がって、仲間になれたことが一番ですね。もちろん、東京神父君やルカ君も名人会に入ったお陰で知り合えたしね!


一番働いていたルカ

工藤:ご縁で言ったら、定宿にしてる「ちとせ旅館」の女将さんのお父さんとうちの親父が昔の仕事仲間だったとか、鉄輪の「まさ食堂」の方が行橋の先輩のいとこだったりとか、身近な偶然が重なるのが別府ですよね。舞台俳優で仲の良い後輩の尚玄ってのがいるんですけど、ブルーバード劇場によく来てて、その関係で一緒の映画に出てた加藤雅也さんと2日間ご一緒させていただいて、別府のうまい店巡りもしましたね。

工藤:あとはなんと言っても、竹馬の友と言ってもいいと思うんだけど、温泉旅行ライターの板倉あつしさんとの出逢いは大きかったですね。ひょんなご縁で仲良くなったんですが、師匠で温泉紀行ライターの飯出敏夫さんからは、あつしとコウタはそっくりで兄弟みたいだなんて言われてます(笑)

飯出敏夫さんはあの『温泉100名山』の著書で、Amazonでの売り上げランキング1位!今月25日に続編の『日帰りで登れる温泉100名山』も発売されます。温泉が好きで別府に来なかったら、知り合うことのないご縁を頂き本当に感謝しています。奇跡の出会いがあるのが別府で、多くの出逢いと優しさに包まれてるなぁって来るたびに実感します。


ブラシから水が出る仕様

「タオルが大事なら、私いっぱい持ってるからあげるわよ」




工藤さんは本当に出逢いを大切にされてますよね。別府での印象深い出逢いなど知りたいです。

工藤:お世話になったのは、第三代泉聖の加藤厚子さんですね。今、私は永世名人で17巡目を湯めぐりしてますが、記念すべき1回目の名人タオルを持ってないんです(泣)後で聞いた話ですが、ある一時期だけ名人タオルの質が落ちて、外国製の安い材質にした時があったらしく、その時に運よく?(笑)名人になり、その安物のタオルを手にしていたんですよね。

初名人になって喜んでいたところ、2017年7月30日に全国ニュースにもなった「湯~園地」に喜び勇んでそのタオルを持って行ったんですが、帰るときにしっかり絞ろうと力を込めたら、ビリビリっと(笑)慌てて広げると刺繍の回りからタオルの端からズタズタで。次の日、慌てて観光協会に行って「1回使っただけで破れたので、お金払うのでもう一枚ください」って言いに行ったんですよ。そうしたら「ダメです」って言われまして(笑)

今なら理解できるんですが、当時の僕は怒りましたね~。1回しか使ってないタオルが絞っただけで破れるのはおかしいって抗議したけどダメでした。スパポート1冊につき1枚ですって言われて。イラついて帰ってやけ酒しました(笑)

工藤:次の日、まだ納得いかなくて、別府の街をぶらついていたら名人会事務所を見つけて「名人タオルが破れて持ってないですが入会できますか」って入ってみたら、そこにニコニコしながら加藤さんが座っていて。色々と教えてくれて最後に一言「タオルが大事なら、私いっぱい持ってるからあげるわよ」と。


慣れた手つきの姫野さん

工藤:それでさっきまでプンプンしていた自分がバカみたいに思えて。「もう一度湯めぐりして貰って来ます」って宣言して2巡目のタオルを持って入会しました。あの時は、加藤さんが泉聖(88回巡るとなれる)だとか、11回巡ると永世名人になれるとか、そんなの全然知らなかったので、思い出しても笑っちゃいます。知らないって怖いですよね。

あの時、加藤さんに会っていなければ、今こうして名人会の理事もしていなかったでしょうし、別府にこんなに深く関わることもなかったでしょうね。僕の人生のターニングポイントの一つでしょうね。加藤厚子さん、改めてありがとうございました。本当に感謝してます。

僕も加藤さんとは仲良くさせていただいてました。とても笑顔が素敵で愛情深い方でしたよね。
今日はありがとうございます。最後にこれから別府に来る人へメッセージをお願いします。

工藤:世界1の泉都別府は、どんな方でも受け入れてくれる温かさと優しさ、少し熱めのお湯が沢山あり、一期一会の多い町だと思います。ぜひ、別府に来てみてください。素敵な出会いがありますよ〜。

別府の全てに愛してるジェ〜。


メガネをかけずクレンザーが入った洗面器を
掃除したばかりの温泉にぶちまけた姫野さん(笑)



MODEL PROFILE

名前:工藤宏太(Kota Kudo)
年齢:50歳
出身:福岡県行橋市
職業:自営業


CREDIT

タイトル:心を磨けば床も光る
撮影日:2024年9月15日
写真撮影&インタビュー:東京神父

撮撮影協力:新光泉、別府市、別府市温泉課、姫野さん、別府八湯温泉道名人会、杉山ルカ、別府八湯温泉道名人会副理事長 長谷部義文(せんべえ)、名人会山口県支部長 片山由香里さん、名人会高知県支部長 石井仁さん、その他一緒にお掃除してくださった方々。



※温泉や個人の情報は全て撮影当時のものです。

ONSEN INFO

新光泉

昭和十六年、市民が創設した浴場。長らく一般開放していなかったが、最近開放され、別府八湯温泉道のスタンプも押せるようになった。まさに地元の温泉という佇まいの温泉。



住所:大分県別府市中島町14-14


営業時間: 12:00~16:00


入浴料金:小学生以上は市外300円、市内200円


泉質:単純泉


地図:湯巡りマップ


公式HP:別府八湯温泉道サイト



BEPPU ONSEN ROUTE 88